先だってディーン様主演のTVドラマが面白かったので、現在原作を読み進めています。山口沙也加さん演じる入間夫人が持っていた赤い瓶に入った毒薬のシーンは何気に怖ろしかったですね。
さて、原作では赤い液体は、山口紗弥加さんに当たるヴィルフォール夫人とその息子のエドゥアールの乗っていた馬車の馬が暴れだし、モンテ・クリスト伯の家来によって助け出されるシーンで初めて登場します。気を失ったエドゥアールの口に伯爵が赤い液体を1滴入れただけで意識を戻します。
モンテ・クリスト伯は、身も世もあらぬ様子の母親に向かって、安心するように手で制した。そして、小函を開けると、そのなかから、金象嵌をしたボヘミヤ・ガラスの瓶を取り出した。瓶のなかには、血のような色をした赤いリキュールが入っていた。伯爵はそれを一滴、子どもの唇の上に滴らしてやった。子どもはまだ顔色さえ青かったが、たちまちぱっちり目を開けた。母親は、それを見るなり、逆上せんばかりに喜んだ。
(山内義男訳 岩波文庫第三巻 P369)
ところで、この赤いリキュールの正体は一体何なのでしょう?とても気になり、血のように赤いのならドイツのイエガーマイスターかしら?それともイタリアのアペロールなのか?はたまたカンパリ?などと思いを巡らせていたのですが、イエガーマイスターが世に出たのは1935年、アペロールは1919年、最も古いカンパリでさえ1860年頃ということなので、モンテ・クリスト伯の時代にはありえないのです。
そうこうするうちに四巻に読み進むと、ヴィルフォール夫人とモンテ・クリスト伯爵の会話の中に例の液体の事が出てきます。
「なるほど、あれを1滴お飲みになって、死にかかっておいでの坊ちゃんは息を吹き返しになりました。ところが、あれを3滴お飲みになると、血はすっかり肺に集まり、肺は激しく脈を打ち出し、6滴のめば呼吸は塞がり、(略)10滴となりますと、万事休すで、たちまち命がなくなります。」
(山内義男訳 岩波文庫第四巻 P94)
ということで、その液体はお酒などではなく、完璧な毒薬のようです。原作では夫人に毒の作り方を教えたのがほかならぬモンテ・クリスト伯爵なんです。伯爵、意外に恐ろしいところがあるんですね。
でも、せっかくなので、上に取り上げた赤いお酒についてちょっと記述させてください。というのも、いずれもハーブなどが含まれる薬草酒なんです。
まず、ドイツのイエガーマイスターはアルコール度数35度のかなり強いお酒で黒ずんだ赤い色が特徴です。色だけなら血のように赤い液体が最もしっくりきそうです。ハーブ、果実、草根木皮など56種類の材料が使われています。主なハーブは、アニス、甘草、カモミール、キャロブ、ゲンチアナ、シナモン、フェンネル、マテ、ミント、ミルラ、ラベンダーなど。ハーブだけでもかなり豪勢でいろんなことに効きそうですね。
アペロールはルバーブ、キナ、ゲンチアナなどのハーブを蒸留酒に浸漬させたもので、アルコール度数は11度。おなじみのカンパリはビターオレンジ、キャラウェイ、コリアンダー、リンドウなど60種類の材料が使われていて、アルコール度数は25度です。
そして、調べていくうちにアルケルメス酒というものに当たりました。18世紀のイタリア、トスカーナ地方のお酒なので、物理的にモンテ・クリスト伯の中に出て来てもおかしくない存在です。使われているハーブについては特に記述がなかったのですが、実際に飲んだ人のブログによるとシナモンとクローブの香りがしたそうです。製造方法もはっきりわかりませんが、赤い色を出すために臙脂虫という虫を乾燥させて使っているそうです。かなりミステリアスですね。
昔はお酒は薬だったと言いますから、これらのお酒がどういうふうに人体に効いていたのか?折を見て調べてみたいと思います。
さて、原作では赤い液体は、山口紗弥加さんに当たるヴィルフォール夫人とその息子のエドゥアールの乗っていた馬車の馬が暴れだし、モンテ・クリスト伯の家来によって助け出されるシーンで初めて登場します。気を失ったエドゥアールの口に伯爵が赤い液体を1滴入れただけで意識を戻します。
モンテ・クリスト伯は、身も世もあらぬ様子の母親に向かって、安心するように手で制した。そして、小函を開けると、そのなかから、金象嵌をしたボヘミヤ・ガラスの瓶を取り出した。瓶のなかには、血のような色をした赤いリキュールが入っていた。伯爵はそれを一滴、子どもの唇の上に滴らしてやった。子どもはまだ顔色さえ青かったが、たちまちぱっちり目を開けた。母親は、それを見るなり、逆上せんばかりに喜んだ。
(山内義男訳 岩波文庫第三巻 P369)
ところで、この赤いリキュールの正体は一体何なのでしょう?とても気になり、血のように赤いのならドイツのイエガーマイスターかしら?それともイタリアのアペロールなのか?はたまたカンパリ?などと思いを巡らせていたのですが、イエガーマイスターが世に出たのは1935年、アペロールは1919年、最も古いカンパリでさえ1860年頃ということなので、モンテ・クリスト伯の時代にはありえないのです。
そうこうするうちに四巻に読み進むと、ヴィルフォール夫人とモンテ・クリスト伯爵の会話の中に例の液体の事が出てきます。
「なるほど、あれを1滴お飲みになって、死にかかっておいでの坊ちゃんは息を吹き返しになりました。ところが、あれを3滴お飲みになると、血はすっかり肺に集まり、肺は激しく脈を打ち出し、6滴のめば呼吸は塞がり、(略)10滴となりますと、万事休すで、たちまち命がなくなります。」
(山内義男訳 岩波文庫第四巻 P94)
ということで、その液体はお酒などではなく、完璧な毒薬のようです。原作では夫人に毒の作り方を教えたのがほかならぬモンテ・クリスト伯爵なんです。伯爵、意外に恐ろしいところがあるんですね。
でも、せっかくなので、上に取り上げた赤いお酒についてちょっと記述させてください。というのも、いずれもハーブなどが含まれる薬草酒なんです。
まず、ドイツのイエガーマイスターはアルコール度数35度のかなり強いお酒で黒ずんだ赤い色が特徴です。色だけなら血のように赤い液体が最もしっくりきそうです。ハーブ、果実、草根木皮など56種類の材料が使われています。主なハーブは、アニス、甘草、カモミール、キャロブ、ゲンチアナ、シナモン、フェンネル、マテ、ミント、ミルラ、ラベンダーなど。ハーブだけでもかなり豪勢でいろんなことに効きそうですね。
アペロールはルバーブ、キナ、ゲンチアナなどのハーブを蒸留酒に浸漬させたもので、アルコール度数は11度。おなじみのカンパリはビターオレンジ、キャラウェイ、コリアンダー、リンドウなど60種類の材料が使われていて、アルコール度数は25度です。
そして、調べていくうちにアルケルメス酒というものに当たりました。18世紀のイタリア、トスカーナ地方のお酒なので、物理的にモンテ・クリスト伯の中に出て来てもおかしくない存在です。使われているハーブについては特に記述がなかったのですが、実際に飲んだ人のブログによるとシナモンとクローブの香りがしたそうです。製造方法もはっきりわかりませんが、赤い色を出すために臙脂虫という虫を乾燥させて使っているそうです。かなりミステリアスですね。
昔はお酒は薬だったと言いますから、これらのお酒がどういうふうに人体に効いていたのか?折を見て調べてみたいと思います。
モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫) | |
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