rosemary days

アロマテラピー、ハーブを中心にフィトテラピーあれこれ。自然療法全域とフィットネスについて。

『赤と黒』~オレンジと夾竹桃の森

2016-05-11 23:48:08 | 物語の中の植物と香り
『赤と黒』は19世紀フランスを代表する小説で主人公ジュリアン・ソレルが材木屋の倅から町長の子どもの家庭教師~神学生~公爵の秘書~と成り上がっていく様を描いた心理小説です。そして出世のために上流階級の女性との恋愛を利用もするのです。ここで注目するのは、ジュリアンが侯爵の秘書になって間もないころ、初めて舞踏会の会場になるレフ邸に足を踏み入れた時の状況です。

 その夜、舞踏会に来たとき、彼はレス邸の豪奢ぶりに驚いてしまった。入口の広場は黄金の星をちりばめた深紅の雲斉布の大テントでおおわれていた。このテントの下の庭は一面に満開のオレンジと夾竹桃の森と化していた。植木鉢が念入りにすっかり地中に埋めてあるので、夾竹桃やオレンジは地面から生えているように見える。馬車の進む道には小石が敷いてあった。
[桑原武夫・生島良一 訳/岩波文庫]


ジュリアンは公爵の命令でしぶしぶ舞踏会に行ったのですが、この豪華絢爛ぶりを見てわくわく楽しくなってしまいます。森と見紛うほど沢山のオレンジと夾竹桃の木々を植え、その上に巨大なテントを張る。そしてその中に馬車が通る道すらできている。スケールがあまりにも大きすぎますね。

わざわざ植木鉢を埋めるのなら最初から地面に植えればいいのに・・・なんて思ってしまった私は所詮庶民です。よく考えてみたら敢えて植木鉢に生えてる樹を使い、見飽きたら他の樹にごっそり植えかえたのでしょう。濃いピンクの夾竹桃の花と真っ白なオレンジの花、どのように配置されたかは書かれてませんが、おそらくアトランダムに並んでいたんじゃないかと思います。タイトルは赤と黒ですが、ここでは赤(ピンク)と白のコントラスト、いずれにしろ綺麗だったことでしょう。また、この時代のパリでこれらの暖かい地域で咲く花を維持するのは経済力がなければ出来なかったと思います。

オレンジはアロマテラピーで使われる最もスタンダードな植物です。香りは敢えて言う必要はありませんね。オレンジの香りには気持ちを明るくしたり、消化を促し胃の不調を改善したり、高ぶった神経を鎮めたりする働きがあります。一方夾竹桃はアロマやメディカルハーブとは無縁ですが、バニラのような甘い香りを放つ植物です。花、葉、枝、根、どの部位にも毒を有し、体内に入ると心臓発作や下痢を引き起こすと言われています。



*上の写真はイメージ重視で新潮文庫版、アフィリエイトは私が実際に読んだ岩波文庫をリンクさせました。



赤と黒〈上〉 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 効率の良い60分メニュー | トップ | 3つのローズウォーター »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

物語の中の植物と香り」カテゴリの最新記事