『かぐわしい殺人』～クラりセージで殺人？

ミステリー・アンソロジー『不条理な殺人』の中の近藤史恵さんの『かぐわしい殺人』という短編の中にクラりセージの精油を使った殺人方法？が記されていました。

ストーリーはある日探偵事務所に若い女性が夫の浮気を調べてくれと依頼にきます。浮気現場はあっけなく抑えられ証拠写真も撮れた。ただ、その相手が依頼人の小学校時代からの親友。よくあるような平凡な事件だった。

ところが、依頼人の夫が交通事故で亡くなり、妻と浮気相手、二人の共通の友人から長年確執があったことが明かされる。探偵は浮気相手を問い詰めると次のような告白をした。

依頼人である妻はできちゃった結婚だったが夫は妻にべた惚れ、誰もその夫が浮気するとは思えなかった。浮気相手とみられる妻の親友はたまたま変な男に付きまとわれ、親友の夫に彼氏の振りをしてもらっていただけだった。妊娠中の親友がつわりがひどくて悩んでいた時、調香師である彼女は親友のためにアロマキャンドルを贈ってあげた。おかげで妻は気持ちがリラックスできた。ところが、妻は流産してしまった。

そして、彼女の夫のワイシャツにさり気なくクラリセージの精油をつけた。そのあと夫は交通事故を起こした。ついでに妻に贈ったアロマキャンドルにもクラりセージが使われていた。しかし確固たる証拠もないし仮に彼女がクラリセージを使ったとしてもそれで殺人は立証できない。

さて、私個人が思うに交通事故のほうはかなり信憑性が高い。クラリセージは安眠を誘う最も一般的な香りでアロマの講座では運転前には使わない方がいいと忠告します。それでも私の生徒さんの中にクラリセージ大好きで車の中のルームスプレーにしている人もいたくらいなので、必ず眠くなるとは限らないのです。

クラリセージは非常に強いリラックス効果があるため、つわりに悩む妊婦がその香りで癒されてもおかしくはないのですが…一般的に通経作用があるため妊娠中の女性は使わないように警告されます。通経作用とは生理を促進させる作用で、妊婦さんが使うと流産のおそれがあると言われています。クラりセージのほかにもローズマリー、ペパーミント、ローズなどにも含まれます。ただ、これまでにも通経作用のある精油を使って流産したという話は聞いたことがありません。

というわけでクラりセージのせいで死に至るかどうかは疑問ですが、使い方には十分注意してください。この小説の容疑者がなぜそんな事をするに至ったか、二人の間の確執については是非本を読んでみてください。

	不条理な殺人
	クリエーター情報なし
	祥伝社