黒式部の怨念日記

怨念を恐るる者は読むことなかれ

千一夜物語再び

2025-02-08 15:12:45 | 小説

トランプ大統領がガザ地区をアメリカの所有とし、住民を他所の地に移住させると言っている。瓦礫の山と化した地から生活環境の整った地に移そうという趣旨だとしても、この地の人々にはとてもじゃないが受け容れられない提案だろう。と想像するのも、中東の地は、古代より支配者が頻繁に変わり、そのたびに住民が他所の地に強制移住させられてきた。大統領の提案はそうした古代の記憶を呼び覚ますのではないか、と思うからだ。事実、中東の国々は一国を除き皆反対しているという。その一国というのはイスラエル。だが、イスラエルだって「バビロンの捕囚」でいやな目に遭っていると思うのだが。

てなわけで、中東への興味はいまだ冷めやらず、そう言えば、千一夜物語をドイツ語で途中まで読んでいたことを思い出し、今ならまた違った感想を得られるかもと思ってまた頭から読み始めた。

千一夜物語はアラビアンナイトというくらいだからアラブの物語のイメージだが、登場する地名はバグダードを始めとして、ペルシャ(今のイラン)、エジプトのナイル川、ギリシャと幅広い。それどころかインド、果ては中国まで登場する。現代の国家観からすれば、バグダードが首都のイラクはアラブだし、イランはアラブと民族が異なるし、ギリシャはヨーロッパの一員てな具合に異なるが、中東の歴史を読むと、これらは密接に関連し合っていて、行き来も多かったようだから登場するのは当然といえば当然である。なお、この物語の大元はササン朝ペルシャ時代に書かれたもので、それがバグダードでアラブ語に翻訳されて今に至るというから(改訂新版世界大百科事典)、ペルシャが登場するのは一層当然である。

さらに、へーっと思ったのは、人名として「モーゼ」「ダヴィデ王」「ソロモン王」が登場すること。これらは旧約聖書に出てくる人物でユダヤ教と切っても切り離せない人々だが、それがアラブの物語に出てきたからへーっと思ったわけ。だが、イスラム教だってユダヤ教やキリスト教と根は同じであることを考えれば驚くことではなかった。


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