S&R shudo's life

ロック、旅、小説、なんでもありだ!
人生はバクチだぜ!!!!

真冬の狂想曲4-3

2006-07-15 10:12:27 | 真冬の狂想曲
4-3
 改札を抜けるとすぐ、松が佐々木に平井の居場所を聞きだすよう指示を出した。上手く話をするよう念を押していた。佐々木は携帯電話を取り出し、副島という名を検索し、発信ボタンを押した。俺は佐々木の携帯電話に耳を押し付けた。相手との会話を聞く為だ。
3コールで電話の相手が出た。
「どうした?佐々木。」
「今からですね、東京に行こうと思ってるんですけど、自分もう金が尽きてですね…。平井さんいくらか用立てて貰えんですか?」
電話の相手は怪訝そうな声を出した。
「お前、東京まで何しに行くんだ?今、松崎が動きよるらしいから、あまり出歩かないほうがいいぞ。」
佐々木は相槌を打ちながら、話を続けた。
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真冬の狂想曲4-2

2006-07-13 13:59:30 | 真冬の狂想曲
4-2
 のぞみ号が岡山を出発して30分ほど経ったところで、松の低い声が俺達の沈黙をやぶった。
「中村は確実に東京におるんか?」
佐々木は間髪入れずにその問いに答えた。
「はい、昨日連絡した時は、しばらく関東で仕事があると言ってたので、居るはずです。」
「平井は?」
―俺はいったい何人生け捕らないといけないのか!と思いながら、この二人の話に聞き耳を立てていた。―
「平井ですか?平井は今、関西のはずです。」
松のこめかみに怒りのサインが走った。
「お前コラっ!なんで早く言わんのか!松木社長、大阪で降りましょう。やっちゃん、大阪で降りるよ!」
まもなくのぞみ号は新大阪駅に到着した。俺はやれやれと思いながら、グリーン車の座席を後にした。
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真冬の狂想曲4-1

2006-07-12 15:33:51 | 真冬の狂想曲
4-1
 山陽新幹線のぞみ号が岡山駅に停車し、発車してまもなくすると、前方のドアから青ざめた顔をした、ホリエモンに似た小太りの男が汗をかきながら俺達に近づいてきた。この男が佐々木だろう。
佐々木はこの寒い中で額から流れる汗をハンカチで拭いながら、松を見つけ口を開いた。
「松崎さん、申し訳ありませんでした…。」
松は少し間をあけてから、低い声を出した。
「いいけ、さっと座れ!」
佐々木は不良に虐められている真面目な学生のように怯え、慌てて松の隣の席に座った。
確か、俺達よりも5つぐらい年上だったはずだが、人間落ち目になると悲しいものだ。
 松は視線を佐々木に貼り付けたまま、俺に言った。
「やっちゃん、佐々木の持ち物全部取り上げちょってくれん?」
俺は汗をかき続ける佐々木に近寄り、持ち物全て渡すように迫った。佐々木は左を向き、松に携帯電話だけは持たせてくれるよう懇願した。
「中村から電話入った時に出られないと、向こうが警戒すると思うんで、携帯は自分が持ってたほうが良いと思うんですけど…。」
しばらく松は考えて、佐々木の懇願を受け入れた。
俺は携帯電話以外の持ち物を全て佐々木の身体から奪い取った。そして携帯電話を持つ事を許した松を怪訝そうに見ていると、
「大丈夫っちゃ!やっちゃん。コイツはもう裏切らんっちゃ。のう、佐々木。」
佐々木は怯えた目で俺をみながら首を何度も縦に振った。
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真冬の狂想曲3-3

2006-07-11 14:46:25 | 真冬の狂想曲
3-3
 リーガロイヤルホテルがある方の駅入り口から来た年の頃50前後の男が、松に声を掛けた。どうやらこの男が松木社長らしい。俺達に軽く会釈した後、松とみどりの窓口に入っっていった。
その二人の後ろ姿をみながら俺はノブに吐き捨てるように言った。
「どうせ、あっちだけやないで、松も引っ掛かっちょんのやろ。」
ノブは俺には誤魔化さない。
「はい、そうです。」
やっぱりな、アイツが人の為にあれ程頭にくる事はないはずだ。
「なんぼいかれちょん?」
「5000万やったと思いますよ。たぶん。」
俺の家のローンが3回払い終わる。呆れていると二人が戻ってきた。
俺とノブはグリーン車の切符を受け取り、二人の後に続いて改札をくぐった。
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真冬の狂想曲3-2

2006-07-09 18:04:52 | 真冬の狂想曲
3-2
「岡山は?」
「やっちゃん、佐々木っち会った事あるやろ?田川の。」
俺は一瞬考えて、
「あー、前に松崎建設の協力会であったヤツ?」
「おう、その佐々木が詐欺師グループの一人やったよ。ほんで自分だけは助かりたいもんやけ、こっちに寝返ったんよ。コイツが東京の事務所を知っとるけ、コイツに案内させないけんのやわー。コイツが今、岡山にガラかわしとるけ、岡山から合流せっち言っとるんよ。」
「大丈夫なん?逃げるんやねーん?ソイツ。」
松は嫌な笑い方をしながら、嬉しそうに言った。
「佐々木の女も家族も実家も、全部押さえとるから、アイツはもう逃げきらん。」
「ほんで、俺はどうしたらいいん?」
「やっちゃん東京詳しいやろ?俺達はみんな顔が割れとるけ、向こうが気付いたら逃げるやろ。やけ、やっちゃんが事務所に張り付いて、中村ってのが出てきたら、尾行して家を突き止めて欲しいんよ。家が解ったら押し込んで、ソイツの嫁さんと子供押さえてくれん?」
やっぱりこんな荒事に巻き込まれてしまうんだなと思いながらも、打ち合わせを続けた。
「それはいいけど、俺その中村ってヤツの顔知らんよ。」
「ノブ!」
松は真横にいるノブを大声で呼んだ。
「お前、前一回、中村を見た事あるよの?」
ノブが考え込んでいると、
「半年ぐらい前、博多のクラブで会った事あろうが!」
ノブもようやく思い出したらしく、慌てて答えた。
「あー、あのしょぼいオッサンですか?眼鏡かけた?」
「おう、そうよ。お前ならチラっとしか会ってないし、大丈夫やろ。お前やっちゃんと一緒に行動せ!」
「解りました…。」
ノブも、もう完璧に諦めたようだ。
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