焼き物は何より窯焚きが大事です。目的に合った土を思い通りに成型しても、使えて鑑賞に堪えるものにするのは窯焚きにほかならないからです。電気でもガスでも温度は上がります。でも安土桃山時代の茶道具のような表裏のはっきりしたビードロや火色は穴窯に松薪でなければ出ません。
昔、珍しく私が窯焚きの前と後に撮った写真です。本当にいい焼けは、この棚の前の熾に埋まって出てきた壷や花生けなのですが。
個展の売上げは大半が薪屋さんに廻りました。辻清明が薪が足りずに家の羽目板を外してくべたなどという話もあります。うちでも行く先々で赤松の切り倒されたのを見つけると、どうにかして手に入れようとしたものです。スカーレットのように一年の大半は薪作りに追われていました。
それでも風向きや天候のせいで失敗することもあり、隙間なく詰めた作品の中に、二、三点でも気に入った色が出ていれば、ま、いいか、また今度、となるのです。
お客さんにいつの窯が一番良かったかと聞かれれば、決まって、次の窯、と答えていたものでした。
昔、珍しく私が窯焚きの前と後に撮った写真です。本当にいい焼けは、この棚の前の熾に埋まって出てきた壷や花生けなのですが。