昔きものと今きもの展

　非常事態宣言がまた伸びて、終わったら行くね、って言ってた方たちには、また足止めになってしまいそうです。

　一方、おいでになった方々は、このやり方だとゆっくり、色々着て見られるし、今回はすべて半額なので安心してみていかれます。

　面白いのは羽織がよく出ること。とくにビンテージものは人気があるみたい。

丈も長めで羽裏の素敵なこと！紋の付いた黒のなんとも色っぽいのも気になります。夏羽織の透けるのも良いですね。

　南部幸雄の伊勢型、藍染の単衣、これだけのものを単衣で拵えた人って、なんて贅沢でお洒落だったのでしょうか？こういう逸品はここにあるだけで心が豊かになります。

　すべて織で描かれている袋帯です。職人気質が伺えるこんな作品に出会うと、つい嬉しくなります。

　こんな状況下、お客様の数は少ないけれど、着物好きとしてはのんびりしたいい時間となっています。

昔きものと今きもの展

　タイトルに置いた昔きものは江戸中期のお掻い取りで、旧家を継いだ方からいただいたものです。捨てるわけにはいかないので、着物好きな私なら大事にしてくれるだろうと。

　生まれつきの着物好きで、古い珍しいものは自然に集まってきたような気がします。

　明治、大正、昭和と伝わってきた着物を焼き物の展示場を使って見てきただき、リサイクルもできたらいい、と考えたきっかけになったもので、この二点はウチの看板です。

　

明治のもので、菊の葉を地に菊の花、君が代が書かれています

時代は分かりませんが、広重の五十三次の宿場町です。この着物と同じ浮世絵を、ずっと後に見てびっくりした記憶があります。

大正の色使いのなんと自由で大胆なこと。中学生くらいの頃、親しい家のお蔵で発見、反物だったのですが、どうしても着たいと仕立ててもらい、サンザ着たものです。

　同じお蔵の中から黄八丈、トキハチなども着古してもまだ自分で帯に直したり、本当にわたしの宝箱でした。

昔きものと今きもの展

　春の到来が早いと思ったら、梅雨も早く来てしまったようです。でも360度見渡す限りの緑は明度も彩度も色々で豊かな気分にしてくれます。

　いつものきもの展、また非常事態宣言が延びて、やはりできないのかしら、と悩んでいましたが、もし、見られるなら嬉しい、と言ってくださる方達がいて、背中を押されるように、展示室に着物を出しました。

　一年半もしまいっきりだった着物達に

ゆっくり呼吸をしてもらい、ホッとした気持ちです。

　さて、どうすればお客さまの重なりを避けて、ゆっくりと楽しんでいただけるか。

　ごく近しく顔馴染みになってくださっている方々にだけ、わがままを言わせていただき、来られる時をご連絡いただくようお願いすることにしました。

　八王子では高齢者優先のワクチンがかなり受けやすくなって、このまま平常へと向かってくれることを願うばかりですが、とりあえず、着物を着て、ウキウキとした気分にもなっていただきたいものです。お待ちしてまーす。

　

2021/05/01 朽ちかけし廃屋野薔薇の香に満ちて

ずいぶん早かった春も今日から五月、風薫る五月。野薔薇やニセアカシア、モッコウバラなど姿より香りが先に来る花の真っ盛りです。

　新刊など滅多に買えないのに、誕生日祝いとして頼んだ　クララとお日さま　を読みました。AIのクララが買われてから役目を果たし廃棄されるまでの話。まっすぐな” 心”がいじらしく美しくて、読んでいる方がAFと呼ばれるクララに感情移入してしまいますが、そこには近未来の差別社会やPCのみの授業で友達をもたない子供達の社会性など様々な問題が提起されているのです。　背景に描かれるのは風にたなびく草原でありクララの大好きなお日さま、美しい田園はイシグロの真骨頂に思えます。

　カズオイシグロの作品は読み直す度に発見があるので、すぐにもう一度、しばらくしてまた開く、ということになりそうです。今回は日本語訳を先に読んでしまったけれど、原書も手に入れなければ。