すっきりと晴れた空、花の香りがいっぱいのこの頃は着物を着て歩きたくなります。もうそろそろ単衣かしらと思いながらも、今日は藍染めの結城を。帯はバリ島のお土産のろうけつ染めをミシンで名古屋帯に仕立てたもの。やはり 藍を基調に茶や青などが斜め模様になっています。結城は昔、古着屋さんで見つけたもの。柔らかく丈夫で無地に近い細かな亀甲模様なのでどの帯にも合わせやすく、つい手が出てしまいます。
この季節、母たちは「帯付き」と呼んでいました。コートを脱ぎ、肩掛けも羽織も不要となって、いよいよ好きな帯を見せて歩く時、ということでしょうか。
母たちがおしゃれをしたい頃はずっと戦争と戦後。もう二度とモンペは着たくないと云っていた母でしたが、気に入ったものを身に着けるためには、ずいぶんと工夫が必要だったと思います。頂き物の着回しはもとより、色柄の良い風呂敷や服地でも帯を作っていました。派手になった着物は長襦袢や羽織にしたり、子供のものを作ったり。手作業なくしてはおしゃれなんてできなかったのですね。
私も母のお下がりの時代を過ぎ、何枚か新しいものも作って貰いましたが、昔ものの色や柄が大好きで、家庭をもって余裕もなかったので、古着屋さんはいつも大好きな場所でした。夫〈陶芸作家〉の個展やパーティーなどに洋服より安上がりだったのです。「大島三代、結城末代」なんて言葉も聞き覚えると、そんなに長い命があるはずの着物を自分が受け継がなくてどうする、みたいな気持ちにもなっていました。
ある日、由緒ある家柄の友達から、引っ越すので置き場がないからと、どっさり着物が送られてきました。なんと映画などで見るだけの古い打掛けや手描きの裾模様、由緒ありげな子供の祝い着などまで!これを何とか生かす方法はないかと陶芸のために作ったギャラリーでの「着物展」を考えたのです。自分の蒐集したものも含めて見ていただき、着られるものはお譲りしました。60過ぎて呉服業界に飛び込み、たくさん勉強もできて数年、やはり自分は着られなくなった着物をどうにかしたい、と思うようになったのです。
今、年に2回、ほんのささやかな展示会をしてみていただいています。
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