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ゲーム攻略、読書感想文など。

読書感想文【魔女の笑窪】

2006年03月18日 03時00分19秒 | 読書感想文
大沢在昌の最新刊。あまりの面白さに一気に読んでしまった。途中までは女版ジョーカーかな、と思ったがもっとドロドロしてる。

魔女の笑窪

【ストーリー】
天草にある孤島・通称地獄島は100年の昔から売春で成り立っている。そこに売られた女は一生島から抜けることができない。だが水原は島を抜け、裏社会でコンサルタントとして成功した。そして今では仕事の傍らエステで金をかけて美貌を維持し、やりたくなたら気に入った男をひっかけて寝る。
彼女の特技は男を見抜く目。何千人という男と寝て身につけた。この特技でコンサルタントとして成功したのだ。

全十章の連作短編の体裁だが、6章からは話が連続する。

【感想】
・・・これだけだといまいち話の面白さが伝わらないので、主な登場人物一覧を作ってみた。

水原…主人公。本名は不明。かつて祖母によって「島」に売られた。だが客としてきた村野の助けで島抜けに成功し、その後整形。そして「島」で身につけた、どんな男も一発で見抜く目を使って裏社会のコンサルタントとして成功した。彼女が手がけるビジネスは売春婦を身請けする男の素性を探ることから、香港の海賊版DVDの作成事業への投資など幅広い。時には自ら銃を持って平気で人を殺す。

星川…元警視庁巡査で、現在は探偵をやっている。おかま。水原から時々仕事を依頼される。

木崎…水原の運転手。

ケンイチ…人気漫才コンビ「クライマース」の片割れ。実は殺人狂。

内倉…四谷署の刑事だが暴力団と癒着している。

趙…中国から来た留学生。小口金融とノミ屋を経営したために暴力団星和会に拉致られるが水原に借金があるために殺されずにすんだ。その後故買屋になる。

前田妙子…右翼の大物・前田法玄の未亡人。

湯浅…雑誌記者を装っているが実は公安刑事。水原は湯浅を殺そうと考えたが利用価値があると思い生かしておく。

孝子…水原より前に島抜けした女。前田妙子に家政婦として雇われ、死の間際に島のことを話した。

若名…風俗専門のライター。女を人目で見抜く目を持っている。水原の正体も一発で見破った。

加治…元国会議員私設秘書。永田町専門の売春クラブを経営している。

枡満幸寅…東北の帝王と呼ばれる大物フィクサー。運輸・流通・マスコミ・鉄道・病院など、東北内のあらゆる業種を傘下におさめた本物の権力者。東北人であることにこだわり、中央への反感が凄まじい。

豊国…1人で美容整形外科を経営している。天才的な腕を持ち、今を美しくするより、設定した年齢が美のピークになるような手術を行う。

羽木田…元連合のヤクザで現在は毛利産業という、吉原で最高級のソープを経営している。

東山…ヤクザの2代目。MBAを取得し、高級チョコレートショップを経営して組織の中で頭角をあらわしている。

朴…九州で風俗店を経営している韓国人。地獄島に韓国人を送り込もうと考えて水原と会う。

ざっとこんな感じ。面白いのは、水原は男と会うとまずその男の性格・性癖を見抜く。それがまた面白い。ジョーカーのように続編が出れば面白いが、最後を読む限り続編はなさそうだ。各章で事件を解決しつつ全体の流れが進み、最後はやはり地獄島との対決になる。

読書感想文【吉原御免状】

2006年03月18日 02時22分22秒 | 読書感想文
時代小説ではもはや古典に近い隆慶一郎のデビュー作。

【ストーリー】
江戸時代前期、宮本武蔵に拾われ、肥後の山中で育てられた松永誠一郎は武蔵の遺言に従って江戸・新吉原に赴く。吉原の主といってよい玄斎こと庄司甚内に賓客として遇された誠一郎はさっそく柳生の剣士たちに狙われる。実は誠一郎は後水尾天皇の落胤であった。その誠一郎に、柳生の剣士は「神君御免状」について聞いてくる。だが誠一郎にはまったく心あたりがない。
一方、江戸柳生総帥・柳生宗冬は裏柳生の総帥であり弟である列堂義仙の暴走を止めようとするが、それが叶わないと悟り、誠一郎に柳生の奥義を授け、列堂を斬ってくれるよう頼む。
やがて誠一郎は自分の出自や吉原の驚くべき秘密を知る・・・


【感想】
誠一郎自身の人間性は別として、剣の天才である誠一郎の活躍は爽快。隆慶一郎といえば「花の慶次」が有名で、主人公のかっこよさでは慶次の方が全然上なのだが。だが話の壮大さが面白く、あれだけのページ数で終わらせるのはもったいない気がする。といっても続編があるが。
この物語の中核となっているのは吉原で、吉原に関する膨大な豆知識なども読み応えがあるし、なんといっても吉原が、公界を形成するために作られた”城”というところがすごい。それがきちんと説得力のある理由がついている。
この小説では後の「影武者徳川家康」の設定となっている家康が関ヶ原で暗殺されて、影武者・世良田二郎三郎元信が入れ替わった設定が使われている。また天海が明智光秀という設定にもなっている。



読書感想文【ターン】【スキップ】【リセット】

2006年03月10日 01時51分15秒 | 読書感想文
今回は北村薫の”時三部作”。最初に読んだのはターンで、これがめちゃくちゃおもしろかった。だいぶ時間たってからスキップを読み、リセットはまたそれからだいぶ経ってから読んだ。

ターン リセット スキップ

簡単に3つを紹介すると、

ターン:
版画家の真希はある日ダンプに撥ねられる。と思ったらなぜか自宅にいた。だがそこは誰もいない世界、いわゆるパラレルワールドだった。そして1日経つとなぜかまたもとの時間に戻る。自分が1日行ったことが全て元に戻ってしまう生活・・・。永遠に同じ日を繰り返す真希だが、なんとか生きていく。そしてある日自宅の電話がなった。

スキップ:
女子高生一ノ瀬真理子はある日突然25年後の世界にいた。そこでの真理子はすでに結婚し、娘もいる国語教師だった。

リセット:
第2次世界大戦中、女学生水原真澄は、結城修一という男にほのかな恋心を抱いていた。が、修一は戦争で命を落とす。
昭和30年代前半。小学5年生の村上和彦はある女性と知り合った。彼女こそは水原真澄だった。実は和彦こそが修一の生まれ変わりであった。修一の頃の記憶が甦った和彦は、真澄に惹かれていく。だが今度は真澄が事故で命を落とす・・・。


感想:
あらためて3つを振り返るとリセットが読後感が一番よかった気がする。なんというか、前世から一緒に見ようと約束していた獅子座流星群を、ついに老夫婦となった二人が見るときのセリフが最高である。この一文のためにそれまでの長々としたストーリーがあったのではないかと、今でも勝手に確信してるのだが。ただ、戦争中の描写は結構退屈だったりする。
スキップは、ある意味悲惨な話で、しかも最終的にまた過去に戻れるわけじゃないからちょっと救いようがない感じがして、一番評価は低いかな。
ターンは最初が退屈なのだが、途中から一気に面白くなる。誰もいない世界のでの生活が何気に面白い。