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ゲーム攻略、読書感想文など。

読書感想文【箸墓幻想】

2006年11月19日 02時35分34秒 | 浅見光彦シリーズ
またまた内田康夫。邪馬台国に絡んだ話で、いろんな意味で面白かった。

『箸墓幻想』
作者:内田康夫




ストーリー:
奈良の遺跡を調査している畝傍考古学研究所の名誉顧問であり、生涯を邪馬台国の研究に費やした小池拓郎が遺体で発見された。小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件の解決を依頼された浅見光彦は住職の娘・有里とともに調査に乗り出す。その直後、小池が発掘調査を進めていたホケノ山古墳から、銅鏡が発見されたことにより邪馬台国論争は畿内説に大きく傾き、発見者であり畝傍考古学研究所の発掘調査のリーダーであった丸岡孝郎は一躍時の人となった。
が、小池のノートを調査していた有里が発見した不審な記録を、考古学研究所の職員・平沢に話た直後、平沢も遺体で発見される。
警察は丸岡を容疑者としてマークするが丸岡は決して口を割らない。
一方、浅見は小池の遺品の中にあった大昔の一葉の写真だけを頼りに、戦前から戦後にかけての小池の交友範囲にあたる。そこからはるか昔の複雑な人間関係を洗い出した浅見は一気に事件の真相に辿り着いた。そしてその以外な犯人の正体は…。


感想:
あとがきを読んで知ったのだが、例の「神の手」捏造事件が本書の執筆終了後に発覚し、しかも本書ではまるで捏造だったのを知って書いたのではないかと思われる記載があった。これはかなり面白い。
本書は邪馬台国論争の話が最初の方で詳しく書かれ、箸墓古墳、そのすぐ側にあるホケノ山古墳が物語の舞台になっているのだが、もちろん実在の古墳。しかも本書の連載開始直後にホケノ山古墳から銅鏡が発見されたため、それが本書にも取り入れられてその当時の様子が詳しくわかる。おまけに本書の中ではその銅鏡が事件を解く重要な手がかりになっているのがまた良くできている。
本書には連載時にはなかったプロローグがあり、最初は読んでもさっぱり意味がわからないのだが(プロローグはたいていそんなものだが)、読了後に読むと色々意味がわかって面白い。とにかく浅見光彦の歴史物系シリーズでは一番面白かった。


読書感想文【一応の推定】

2006年11月12日 02時28分35秒 | 読書感想文
第13回松本清張賞受賞作。この賞はかつて横山秀夫も「影の季節」で受賞していた。後半は一気に読んでしまった。

『一応の推定』
作者:広川純

一応の推定

ストーリー:
”一応の推定”理論とは、自殺の認定について、はっきりとした自殺であるという証拠がなくとも、様々な状況から自殺であろう、という根拠が明白ならば、自殺として認定できる、という理論である。

長谷川保険調査事務所に勤める村越は定年退職を間近に控えた1月4日、調査を命じられる。調査する事件は昨年12月24日に起きたJR東海道線膳所駅ホームで発生した人身事故。死んだのは原田勇治という60歳の男性で、ホームから飛び降りたところを通過した電車に撥ねられたというものだった。
依頼元のグローバル損保の主査・竹内と調査に乗り出した村越は、原田の遺族から、孫娘の臓器移植の費用のために5千万が必要であり、一刻も早く原田の保険金3千万をほしいといわれる。自殺と決め付ける竹内と、あくまで客観的に事件を見ようとする原田は、次に膳所駅に行き、助役から、事故を目撃した人物がいるかもしれないという情報を得た。が、その人物の手がかりがない。
原田の資産などを調査するうちに、実は原田が昨年6月に破産し、銀行の抵当に入れていた家を失ったことや、事故の4日前に予約を入れた旅館を事故の前日にキャンセルしていたことを知る。
次に、膳所駅の目撃者が宮大工の家永という人物だと知り、家永の行方を追うが、家永も同じく破産して抵当に入れていた家を失っていた。
果たして原田は本当に自殺だったのか、家永という人物は本当に事件を目撃していたのか。そして2人に共通する境遇は何を意味しているのか・・・。


感想:
次から次へと証人が現れ、事件を追っていく様は結構面白いのだが、家永がすらすらと証言するところはなんか不自然な感じがした。お約束で最後の最後にどんでん返しがあったのだが、それの伏線は見事だった。
てっきり家永が電車で撥ねられていた身代わり殺人かと思ったのだがそうではなかったなぁ。

読書感想文【十三の冥府】

2006年11月10日 03時12分58秒 | 浅見光彦シリーズ
かの有名な(?)キリストの墓が帯に書いてあったので前々から読みたいと思っていた。といっても結局内田康夫なのだが。

『十三の冥府』
作者:内田康夫


十三の冥府

ストーリー:
「なにわより じゅうさんまいり じゅうさんり もらいにのぼる ちえもさまざま」

青森中央大学で考古学を学ぶ神尾容子は、自分の記憶に刷り込まれているこの唄の正体が解らず不思議に思っていたところ、蕪島ですれ違ったお遍路がこの唄を歌っているのを聞いた。が、その数日後、お遍路は新郷という地で殺された。
「都賀留三郡史」の偽書騒動の取材に行くことになった浅見は、途中の新郷というところでお遍路・が殺害された事件を知る。興味を持った浅見はお遍路のたどったと思われる足跡を追い、さらに不可解な連続殺人事件に遭遇した。殺されたのは偽書と言われる『都賀留三郡史』の偽書証言をした大工・谷内と、その下で働いていた男・山下だった。『都賀留三郡史』の正体を知ろうと思い、発見された八荒神社に向かった浅見は、宮司の湊と会い、奇妙な迫力を感じた。
さらに「都賀留三郡史」を偽書として糾弾する青森中央大学の教授までもが変死していたことを知り、ますます湊宮司への疑いは深まる―


感想:
かなり読み応えあった。最初の竹内文書から始まって、「東日流外三郡誌」に材をとった都賀留三郡史の話。これはまんま東日流外三郡誌の事件をなぞっているのだが。調べてみるとこれがまたうさんくささ100%で笑える。
冒頭で登場した唄の正体があっさりわかるのは拍子抜けしたり、複雑な血縁関係とかは途中で読んでて疲れてしまったし、キリストの墓は全然事件と関係なかったりと、マイナス点もいくつかあるが、浅見シリーズの中では一番面白かったかもしれない。タイトルの意味も最後にわかり、秀逸なネーミングだなと感心した。

読書感想文【遺骨】

2006年11月10日 02時58分31秒 | 浅見光彦シリーズ
またまた内田康夫。

『遺骨』
作者:内田康夫

遺骨

ストーリー:
淡路島へ向かうフェリーで浅見光彦と知り合った男は淡路島の常隆寺に骨壷を預けていった。が、数日後、男は都内で何者かに殺されていた。事件に興味を持った浅見は、殺された男―龍満智仁はグリーン製薬の営業職―の死後に常隆寺に預けた骨壷を石森という知人が持っていったことを知った。さらにその後、龍満と同じグリーン製薬の田口と名乗る男も骨壷を取りに常隆寺に来ていたことも知る。だがその後本物の田口は栃木県足尾で遺体となって発見された。
謎を解く鍵は持っていかれた骨壷にあると考えた浅見は石森の行方を追い、山口県の仙崎へ向かう。そこは詩人・金子みすヾの故郷として名高い地でもあり、龍満が少年時代をすごした地でもあった。
一方、足尾の遺体遺棄現場から、犯人は足尾に土地鑑のある人間だと考えた浅見は、かつて足尾銅山で働いていた人たちの名簿から、グリーン製薬と関係の深い男の存在を突き止めた。終戦直後の仙崎で何があったのか―

感想:
最初は金子みすヾがらみの話かと思って読んだら思いっきり硬派な社会派小説だった。まぁそういうの大好きなんだけど。ただヒロイン不在というか、どうもヒロインがいない浅見シリーズは盛り上がらないなぁと思ったりもした。途中、浅見が調査をしている対象が医学会の超大物だったことで兄・陽一郎とぶつかる場面が面白い。
テーマは臓器移植と731部隊。現実にありそうな話だったのでちょっとぞっとした。

読書感想文【中央構造帯】

2006年11月04日 01時34分44秒 | 浅見光彦シリーズ
最近浅見光彦シリーズばかり読んでるなぁ。

『中央構造帯』
作者:内田康夫

中央構造帯(上) 中央構造帯(下)

ストーリー:
日本長期産業銀行の部長、課長が相次いで死んだ。そして銀行の嘱託医の見立ててで心臓発作と診断されたため事件性は無視された。
長産銀のOL、阿部奈緒美は雲の上の上司にあたる田中次長に食事に誘われて平将門の話をされた。実は奈緒美の実家である茨城県猿島郡岩井町は将門の本拠地であり、今でも将門信仰の篤い土地であった。しかしその後田中は何者かに殺害されて千葉県市川市にある八幡藪不知に遺棄された。
東京大手町にある長産銀のビルの隣には平将門の首塚があり、死んだ3人の席は、座ると将門の怨念が降りかかると言われる「将門の椅子」とよばれる位置にあった。

田中の事件に興味を持った浅見光彦は偶然奈緒美と出会った。二人は大学の同期でもあり、積極的に捜査に協力しようとする浅見だったが、奈緒美は田中の死のショックから抜け出せず、浅見への情報提供を渋る。やがて奈緒美の先輩・前原ひとみや、田中の後任で国際部次長になった川本康助から事件のことを聞いた浅見は事件の真相を突き止めようとする。そして過去に死んだ部長、課長や、長産銀の無理な貸付により自殺に追い込まれた不動産屋や、1年前に死んだ長産銀の課長もみな、将門にゆかりのある土地で死んでいたことを突き止める。

浅見は銀行の特殊な体質に阻まれながらも、徐々に、この事件が将門の名を借りた人物によって仕組まれた事件であることに気づき、やがて川本の祖父・壮明や、奈緒美の祖父・幸正、そして死んだ長産銀の大西相談役が全員戦友であったことを知り事件の核心に近づく・・・。


感想:
今回はミナミにしてはストーリーをうまく書けたかな…?
本編は最初に昭和20年の終戦秘話ともいうべき話と、川本康助の両親と祖母が死んだ飛行機事故(実話)の話、そして千葉県の民家で長産銀の井田部長が死んだ現在の話の3つがプロローグとして書かれている。最初はこの3つがどう話に絡むかで興味をひっぱられる。実は2番目の川本康助の子供時代の話はそんなに重要ではないのだが。
読んでる最中に終戦の話が事件にどう絡んでくるのか見えてきて、最後の犯人が明かされるところではあっと驚かされた。
この話は平将門のまつわる様々な伝説+無理な貸付によって泥沼にはまっていく銀行の体質の2つがメインになっている。正直タイトルはあまり内容に相応しいとは思えないのだが。
事件の終わり方もなんとなく中途半端な感じがした。また、ヒロインの奈緒美は浅見への恋愛感情が全然見受けられなかったのもなんだかなぁという感じだった。