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壊れたニッポンを治す為の処方箋#2:給料(収入)と物価が上がらない理由・原因(その1)

2022年08月09日 16時18分24秒 | 経済
前書き:「壊れたニッポンを治す為の21の処方箋」では、ここ20~30年程の間に顕著に表出してきた問題点を中心に記載し、処方箋として「教育」、「経済」、そして「農業」の3個の分野における改善策を記載したが、今回は”ここ20~30年程の間に顕著に表出してきた問題点”に縛らず、そして前回に記載した内容の深堀または別の問題点を明記し、その解決策を明記していきたい。そして今回のテーマは主に経済的な分野での問題点や解決策を中心に考えていきたい。


最近、日本での収入が30年程変わっていない事が語られる様になってきた。そしてウクライナでの戦争と円安などが重なって、巷では物価が高くなってきたと騒がれている。しかし、経済学者の説明を聞くと、まだ物価高とは云えず、あくまで石油の価格が上がった事による一部商品の値上げが起こっているだけで、物価が上がったとは未だ云えないとの事である。6月そして7月になり、多くの商品の価格が上がった様にも感じられるが、経済学者はまだ物価の高騰は限定的で、エネルギーなどの一部の価格の上昇による値上げであって、物価高とは云えないとの事である。また仮に物価が上がったと云ったとしても、欧米のそれと比較するとかなり抑ええられたレベルである。
日本には物価が上がらない根が深い原因があり、それを紐解いて深堀しないと、根本の問題解決にはならない。消費者にとって、物価は安い程良いが、生産者に取っては決して良い事ではない。物価が上がらないために、自ずと収入も増えない。結局日本人は自分の首を自分で絞めている状態である。物価が上がらないから、GDPも上がらないと言っても言い過ぎではないだろう。


物価が上がらない(または収入が上がらない)理由は幾つかあるが、先ずは次の二つの表面的な理由を考え、その後深堀していきたい。
・供給過多(日本の市場に置ける需給ギャップ):
・日本人の値下げ要望の強さ:
上記以外にも沢山の理由がある。例えば、”安い賃金での製造できる能力を持つ近隣諸国の存在”や、政治の無策や、無能な企業経営者の存在など、他にも沢山の原因・理由があるが、その他の原因・理由は他力的、または外部要因であるため、ここでは議論をしない。一方この上記2点については、その原因・理由を我々自分自身で考え、解決できる問題であるため、これらについて考え、深堀していきたい。

供給過多:バブル崩壊以降、日本の経済はほぼ常に需要より大きき供給を続けてきている。供給が需要より恒常的に多ければ、価格が上がる事は有り得ず、供給の抑制または需要の喚起を起こさないと、価格が上昇する事は起こり難い。当然の結果である。この需要と供給の差を表現する指標として、”受給ギャップ”と云う言葉を使って表現している。

需給ギャップとは、日本国内の経済における需要と供給量の差である。今の日本の経済は、供給過多の状態で、現時点での需給ギャップは15~25兆円とも云われている。2021年の日本のGDPが537兆円だったので、GDPのマイナス3~4.5%辺りであり、決して少ない金額ではない。受給ギャップがマイナスと云う事は、供給過多と云う事なのだが、供給が需要を上回る場合、当然価格競争になってしまう。経済学者は需給ギャップを埋めるための需要刺激策を取る必要があると繰返し云っている。
余談だが、2020年の4~6月期では、この需給ギャップがマイナス10.2%であった(内閣府の推計)。そしてバブル崩壊の1993年以降、需給ギャップがプラスだったのは、リーマンショック前や安部政権後半などの合計8年程の期間のみである。そのアベノミクス効果でプラスに転じていたが、消費税を10%に上げた途端にマイナスに転じ、そしてその後のコロナの影響でマイナスが続いている。

日本人の値下げ要望の強さ:
巷では、食料品を買いに行くのに、チラシやネット広告を見て1円でも安い店に行って買い物をする人は沢山居る。新聞を購読している家庭では、毎朝新聞に折り込んでいるチラシを吟味するのが日課になっている人も多くいる。若い人の中ではスマホでネット上の広告を見る人も少なからず居るだろう。そして2~3軒の見せを回ってその日の買い物を済ます人も多くいる。
食べ物屋やレストランでは、500円(ワンコイン)でランチを提供し、300円の弁当も有る。安い事は消費者に取っては有難い事ではあるが、誰かがそのシワ寄せを受けている。個人的な感覚では、昼食費用は高卒時点では400円。大学では500円、社会人1年目で600円。今は1000円前後が本来の相場であり、この価格はほぼアルバイトの1時間分と同じである。しかし1000円だとしても、他の先進国と比べて低い値段になっており、他国では1500~2000円が相場の様である。500円のランチが存在すると云う事は、少なくとも40年前の物価と同じと云う事になる。
それから100円ショップの存在。誰もが”この品質でこの値段”と感じ、重宝しているであろう。しかしその裏では生産者の収入が犠牲になっている。そしてその結果、今では日本の物価は先進国では最低レベルになり、もはや中進国以下のレベルである。

一般企業が購入する生産財などの物品では、中国を中心とする製品との価格競争に晒され、国内の企業からは同等の価格での納品を強要され続けている。その中国などの企業が自らの努力で品質を向上し、安価な製品を作ってきたのであればまだ納得できるが、日本人が技術を供与し、または現地で製造する事で競争力を付け、そして自ら自国の製造業を壊している。何か間違っていないだろうか。

事業を行う上で、コストの削減は大変大事な課題であり、企業に取って最重要課題の一つである。これについて、日本は世界の最先端を行っている。お弁当を例に取ると、昔は手工業的な作り方でお弁当を作っていたが、今は生産工場でライン生産でお弁当を作っている。具体的な例としてコンビニ用のお弁当等を作っている工場では、サンドイッチを作る場合、食パンをラインに並べる人、レタスをパンに載せる人、ハムを載せる人、等々が別々の作業者が隣り合わせで作業をしている。一旦製造ラインが動き始めると、一瞬たりともよそ見も出来ない位にハードな作業で、昔チャップリンが出ていた映画の「モダン・タイムス」の様なライン製造である。今の自動車などの製造ラインは昔と違って人が機械の様に働く事は少なくなったと云える。しかしコンビニのお弁当の製造工場は「モダン・タイムス」を彷彿させる様な作り方を現代でもしている。この様な作り方をすれば、安く作れるのは当然であろう。

このお弁当やサンドイッチの製造の様に、製造を効率化してコストを削減する事については日本人は世界の中で抜きんでている。それは誇るべき事であろうが、コスト削減のために賃金を抑制している事に大きな問題がある。お弁当の製造工場ではほぼ100%が非正規労働者であり、一般的な工業製品の製造現場でも非正規労働者が増えている。これら製造業では製品の設計や製造方法に工夫をしてコストを削減するのではなく、人件費を抑えてのコスト削減にここ20~30年程は邁進している。そしてこれに引きずられる様に、正社員の賃金も殆ど上がらない状況がバブル崩壊以降続いている。この考え方を改めない限り、日本の給料は上がる事は起こり得ない。

では一体何故、日本人ではこの様な状況になっているのだろうか?その原因を深堀していきたい。原因には2段階あり、先ずは表面的な原因を整理し、その解決策を考えていきたい。その後にその根本原因を深堀していきたい。(次回に続く)



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