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池上彰のやさしい経済学(2回目)

2012-09-03 15:08:33 | ためになる話
池上彰の ニュースがわかる やさしい経済学 

著  池上 彰     テレビ東京報道局 編 (2回目)

君は年金をもらえるか 消費税をどうする  

日本がいま直面している大問題は「社会保障制度と税」です。
年金などのしくみと消費税の特質の解説

年金は保険の一つ

社会保障制度の中でも特に年金制度問題と消費税については、いろいろな議論があります。最初は保険について考えていきます。年金も保険の一種です。
保険はリスクに備えるものです。昔、大航海時代に海に出ていった船がどこかで沈むと、大変な損害になりました。船が沈んだときの損害を取り戻すために、保険をかけようということになり、みんながお金を出して保険会社をつくったわけです。
もともと海の上で船に何か起きたときに保険が支払われるというかたちで始まったのが、損害保険です。
生命保険は、一家の大黒柱、お金を稼いでいる人が突然の事故や病気で亡くなったときに、家族が路頭に迷ったりすることがないようにしようというものです。
生命保険会社には大原則があります。これを 「大数の法則」 と言い、大勢の人が集まることによって全体の見通しが得られることを言います。
生命保険会社も損害保険会社もこれで成り立っているのです。たくさんの人に保険に加入してもらうと、社会全体の平均寿命にしだいに近づき、どれくらいの保険金を用意しておけばよいか、全体の数字が読めるようになり、経営が安定してくるのです。

介護保険制度ができた理由

始まってからまだあまり間がないものに介護保険制度があります。
介護保険も年をとって寝たきりになって介護が必要になるリスクに備えて始まったものです。みんな介護を受ける可能性があるわけだから、社会で解決する必要がある。
そこで介護保険制度をつくり、介護保険料を払い込むようになりました。
いまでは介護保険料を払い込んでいれば、いつでも介護保険を受ける権利が得られるようになったのです。
逆に言えば、最後まで元気でぴんぴんしていて亡くなれば、介護保険を受けることはなくこの場合は掛け捨てになるわけです。

長生きのリスクに備える年金保険

年金は長生きのリスクに備えるものです。まさに経済学的な発想ですね。健康でたくさんお金があって、長生きできればすばらしいことです。
でも、仕事がない、あるいは年をとって収入がなくなった、蓄えがない、病気になるかもしれない。長く生きているけれども、病気になったりして貧困にあえいでしまうというリスクに備えようというのが年金保険です。
誰でもそうなる可能性がありますからみんな一緒に入ろうということで年金制度になりました。

年金保険のしくみ

年金保険は2階建て、あるいは3階建てという言い方をします。
自営業、学生・・国民年金、(基礎年金)+(国民年金基金→加入して保険料を支払う)
企業に勤めている人・・厚生年金、(基礎年金)+(厚生年金)+(企業年金→企業も年金保険料を積み立てている)
公務員・・共済年金、(基礎年金)+(共済年金)公務員の受け取る額が多いのは恵まれている一つの要素です。

国民年金は、20歳になったら加入する義務があります。年金制度には、いまから保険料を払っておけば、20代で身体障害者になって就職できない、あるいは働けなくなるというリスクに対して、一生涯にわたって障害年金が支払われるというしくみがあります。加えて、国民年金にしても厚生年金にしても、もらっていたご主人が亡くなると、扶養されている奥さんなどには遺族年金が支払われます。

日本の年金制度は、自分で積み立てるのではなくて、若い人が納めたお金を、お年寄りに渡すしくみに制度が変わり(田中角栄内閣のとき)いま年金を受取っているお年寄りが若いときに払いこんでいる保険料は、当時のお年寄りの年金に使われました。
こんどは皆さんが払いこんでいる保険料を、いまのお年寄りが受取るというしくみになっているのです。
これを日本の厚生労働省は 「世代間の助け合い」 という言い方で呼んでいます。

年金制度には3つの問題点

少子高齢化→若い人がどんどん減ってくる一方、お年寄りが非常に増えている。                      株式投資の失敗→そのお金を増やすために株で運用したのです。バブルがはじけて株価が暴落。その結果これまで払いこんだ多額のお金が消えてしまったという問題
経営の失敗→代表例がグリーンピアという施設です。「たくさんお金が余っているのだから、これで事業を始めよう」と当時の厚生労働省の役人が巨大なリゾートホテルを全国につくり、その資金には厚生年金の積立金が注ぎこまれ膨大な赤字をだして、ものすぎい安い値段ですべて売却されました。

直接税と間接税

直接税は、その税金を負担する人と払い込む人が同じです。所得税は、働いた人が直接納めるわけですから、直接税になります。
間接税は、その税金を負担する人と払い込む人が異なります。
間接税の典型的な例は消費税です。買い物をしたときに消費税を払い、税を負担していますが、消費税はそれを受け取った商店がまとめて税務署に納めています。ビールや日本酒を飲んだ人が酒税を払いますが、その税金を国に払い込むのは酒造メーカーやビールの会社です。
直接税と間接税をどれくらいの比率にしたらいいのかというときに、よくでてくる言葉が直間比率です。世界の先進国で標準的なのが5対5です。日本は直接税が6で間接税が4です。これを5対5にしたほうがいいのではという議論があります。
これが 直間比率の見直し 問題です。(消費税を上げるという話)

直接税と間接税の特徴

直接税は所得税や企業が払い込む法人税です。これは景気の影響を受けやすい。不景気になると当然収入が減るわけですから、所得税なども減ります。不景気になったとたんに、直接税はどーんと下がります。
でも不景気になったからといって、買い物を急に減らすことはありません。だから消費税の収入はすぐには減らない。
景気が落ち込んだときに、間接税の比率が高いと、国の税収が急に減ることはないのです。
ところが直接税のほうが多いと、景気が悪くなったとたんに国の税収も減ってしまうという問題があります。だから直間比率をなるべく5対5にしたほうがいいのではないかと議論が行われているのです。