「ちぃ」いわく『おでんの味がする』
「ちぃ」が頼んだのは「チキンとポテトのサンドイッチ」。
「ちぃ」いわく『スナック菓子の味がする』
こっそり言うのではなく、カウンター席、コーヒーをドリップしている店員さんの前で堂々と…悪気はないのだ。
言わんとすることは分かるが、例えが…
このところ、<24>のシーズン6を見ている。
もう、「ま」さんは とにかく夢中だ。
週末は一日に何度も<おでかけ>して レンタル店の棚をチェックする。
1巻に出会えるまで 何回<おでかけ>したのかはわからない。
続きを求めて 会社帰りにレンタル店に立ち寄り 在庫がないと悲しそうな顔で帰宅する。
夕ご飯を食べてから またレンタル店に<おでかけ>して 打ちひしがれて帰宅する。
運良くゲットできた日は スキップしながら帰宅する。
夕ご飯を食べながら 真剣な顔で一気に見る。
ジャック・バウアーの行動に一喜一憂。
思いがけない成行きにくちびるを「く」の字にひん曲げ
『こう来たかぁ~~!』と頭を抱え、
裏切りには『それはないやろっ!』とつぶらな瞳をひんむき、
事件が起きると『えらいこっちゃぁ~~~』と右へ左への大騒ぎ。
もう、「ま」さんの頭の中では <僕はビル・ブキャナンの背後霊>なのである。
自宅リビングテレビ前がCTUだ。
このすごく集中して<感情移入>というか、むしろ<擬似体験>しているので
見終えると抜け殻になってしまう。
次巻のレンタル開始が待ち遠しい。
全巻見終えた後は また まっ白い灰になっちゃうんだろうなぁ。
「ま」さんはかゆがりである。
先日、
左脇の下から右脇腹にかけて
背中をナナメ一直線に 蚊にくわれた。
赤く並んだプチプチは5つ。
なんでそんなことになったのか 本人にはさっぱり分らないそうであるが
あとちょっとで <北斗の拳>の世界に行けたかもしれない。残念だ。
で、
当然であるが ものすごく痒いらしい。
苦悶の表情を浮かべ『かゆい、かゆい、かゆい~~~~っ』と叫んでいる。
いつもは大活躍のモロコシヘッドも焼け石に水である。
粗塩を練り込むのも効果ありと最近知人に聞いたので それも実行してみたが 無駄だった。
考えた末に 保冷剤を当ててみた。
冷たさで痛みを誤魔化すという姑息な作戦であるが
それなりの成果があったらしい。
「ま」さんは満足し 阿弥陀如来像のように平穏な表情になり
『やっと落ち着いた』という感じの深呼吸をした。
しかし あまりに冷え過ぎると別の苦痛が生まれるようで 長時間は当て続けられない。
そして 保冷剤を外して ちょっと経つと 冷却誤魔化し効果は消えてしまうのであった。
ふたたび 痒い悪魔にとりつかれてしまう。
背中に保冷剤を当てたり外したりを繰り返しながら
私は夫の四角くて広い背中を 何か有意義なことに利用できないか考えてみた。
・・・
何も思い浮かばなかった。
「ま」さんは食いしん坊である。
醤油と七味のせんべいを食べて
みたらしとごまあんの串団子を食べて
焼き草もちを食べて
そば団子を食べて
そばを食べて
てんぷらを食べて
コーヒーを飲んで
サクランボのゼリーを食べて
近所の神社の縁日に立ち寄って
トルネードポテトを食べて
もうホントにお腹いっぱいのハズなんだけど、
初めて新幹線を見た少年のように 目をきらきらさせて
『あそことここのお好み焼きを食べ比べしたい!』と言い出した。
3時ころにせんべいを食べて お好み食べたいと言ったのは8時ころの話。
「ま」さんは 食べたいと思ったものは 必ず食べる。
阻止しようとすると 『あとで隠れて食べるよりいいでしょ』と 上目づかいに見られたりするので
私としては なかなか手に負えない部分もある。(つか、私とて量のコントロールは苦手だ。)
そして、お祭りという一種独特の雰囲気の中で 私の満腹中枢も半ばイカレていた。
つまり、うかれていた。
手分けしてお好み焼きを買い求めると ずっしりとした重みに 二人は真剣勝負を覚悟した。
いよいよ
小麦粉とキャベツとソースの塊との対決がスタートした。
これがなかなか手強い。
いつまでも第一線で踏ん張り続ける三沢光晴氏と張り合うレベルだ。
半熟の目玉焼きを冠した むちむちとした生地にはてんこ盛りのキャベツが絡み
ちょっとした山脈を形成している。
どろどろの熱いお好みソース、コクを出すぶちゃぶちゃのマヨネーズ、
祭りのクライマックスを飾るににふさわしいボリュームである。
・・・・
もう既に、お好み焼きを受け取ったときから予想はついていたが
私は早い段階でギブアップをした。
役立たずもいいところだ。
「ま」さんは戦い続ける。
正直、美味とは言えない二つのお好み焼きを
堅実な戦法で 確実にひと口ひと口片づけて行く。
クラッシャーがビルを解体していくのによく似てる。
すべてのお好み焼きを平らげた時
「ま」さんはテロ攻撃を未然に防いだCTUのメンバーのような表情をした。
なすべき仕事を終えた男は 充実感で光り輝いていた。