昨日「トヨタ自動車がスズキと業務提携に向けて動き出した。」とニュースで報じられた。
スズキの国内販売は、いうまでもなく軽自動車が中心であった。
多くの家電などのモノ商品の価格は「大量生産大量販売」を基本としている。
つまり、自動車産業、軽自動車も「大量生産大量販売」無くして、自動車の価格は成立しないのだ。
例えば、ホンダの「モンパル」は約40万する。
「モンパル」は四輪付いていて、シートもハンドルも付いているが、屋根やドアはない。スピードも出ない。
一方、軽自動車のスズキ・アルトの廉価版は約85万で売られている。
こちらは、当然屋根もドアもついてちゃんとしたクルマだ。エアコンやCDプレーヤー、はたまたSRSからABSまで、多くの装備もついている。
アルトがこの価格で販売出来るのは、まさに「大量生産大量販売」の賜物だ。
2011年12月にホンダからN-BOXが発売され、ホンダが軽自動車に本格的に進出した。
これは、ホンダにとっては、将来、国内市場はダウンサイジングが起こってくることをヨミきった結果だ。
軽自動車は特に「大量生産大量販売」で価格をキープしていたので、ホンダには当然不安があった。
元々、軽自動車に特化しているダイハツやスズキに較べて小型車も商売しているホンダは、その開発設計コストから生産、販売コストまで高い。その上に数売れなきゃ、ダイハツやスズキより遥かに高いコストになり、大幅赤字となる。
ダイハツやスズキ側から見れば「ホンダは軽自動車を本格的にやってこない、やってこれない」とみていたはずだ。
所詮、ホンダは小型車造りの体質(開発〜工場〜販売)なので、軽自動車に進出すると必ず赤字で、その赤字幅を出来るだけ少なくするには、変な話だが本格的にやらずに、台数を少なく(赤字幅を少なく)することしかないと考えていたと思う。
しかし、現実的にはダイハツ・スズキはホンダと軽自動車の販売をシェアすることになってしまった。
また、その上に2013年には日産・三菱自動車連合が参入して、結果4社で軽自動車マーケットをシェアすることになった。
当初は、市場のダウンサイジング化で軽自動車の販売は全体としては伸びていたが、2015年の軽自動車税のアップがきっかけとなって軽自動車販売は下降線だ。
さらに、軽自動車は普通・小型自動車と違い、軽自動車規格のもとに自動車税など恩典があったが、自動車に変わりは無いので、衝突安全性能を市場から要求されたりして、1998年にはサイズアップでクリヤーしてきたりしている。
この様に、軽自動車は本来の目的から少しずつ離れて、普通・小型自動車化の技術を要求され、それに対応してきた歴史がある。
近々では、環境車としての「燃費向上」が市場から要求され、
「アイドルストップ」や「チョットだけハイブリッド」など各社方法は異なっても、軽自動車は小さいから燃費もその分良くないといけないという市場の声に対応してきた。
元々軽自動車は軽いので、トヨタが開発したようなHEVはさらなる新技術が投入されないと、まさに軽量な軽自動車では費用対効果で採用出来ないのだ。
またさらに、自動運転となると、全体価格の安い軽自動車では、コスト比率が高くなり、採用が難しい。
しかし、軽自動車は1998年の新規格以降、カーメーカーの努力もあり、今では「軽自動車に見えない」「小型車とかわらない」というユーザーの声も多く、実際ルックスから乗り心地まで良くなって、小型車並に成長した感じだ。
一方で、軽自動車の存在意義は益々日本で増してきている。
都会と地方の格差が言われているが、地方へいくと公共交通機関が少なく(個人的には同じように税金を納めているのに)不便なので、自家用車に頼る事になる。当然、車両価格や経費の安い軽自動車が大切になる。
このように軽自動車は、市場としては求められているにも関わらず、参入企業が増え企業単位での「大量生産大量販売」が難しくなり、環境やITなどの時代変化への対応コストアップが避けらず、その継続的存在は難しくなってきている。
軽自動車は「構造的」に、ある意味追い込まれてきている。
そのことを肌身で感じてきたのが、長く軽自動車で商売してきたダイハツとスズキだと思う。
今回、スズキは業務提携ということだが、ダイハツはすでにトヨタの子会社だ。
2大軽自動車メーカーがトヨタと生きていこうとしている。
世の中、時代の変化を感じざるを得ない。
まさに、ホンダの創業者の1人である藤沢武夫が言っていた「万物流転」だ。
しかし、軽自動車に関しては、地方の公共交通機関の代役もしているという存在意義からも、民間だけでなく国も参加して、その有り様を考えていかねばならないのではないかと思う。