劇団芝居屋第五回朗読劇場 あいさつ文
ご存知物への挑戦
今から五十年余り前、私が物心がついた昭和二十年後半あたり。その頃の映画・演劇の世界には、一世代前の作家の作品が形を成し、幾度の再演や上映によって世に浸透した「ご存知物」が存在しました。現在でも年末にテレビ・映画などでとりあげられる「赤穂浪士」などはその代表でしょう。また義理人情を描いた「股旅物」などがあります。
このご存知物が存在し得た要因は、多分に情報伝達のシステムの未発達が寄与しています。今の様に垂れ流しの様な情報が飛び交ってはいなかったのです。ゆったりした時間の流れの中で反芻された物語はやがて世間の共有のものとなり、人々の情感と深く結びつき、庶民の喝采を得てきたのです。
しかしそのご存知物は情報社会の発達と共に姿を消しました。奔流の様に流れる情報量を前に、人々は自分に必要なものだけを拾い上げそれを活用するようになりました。共有という概念が薄れてきたのです。
今や、当時のご存知物はその存在すらも、忘れられかけています。
私は、あの世代を生きてきた人間として、ご存知物を掘り起こし、劇団芝居屋朗読劇場の場でご披露して行きたいと思っています。
この試みは従来の表現朗読と共に劇団芝居屋の朗読劇場をより豊かにしていくものと確信しております。どうぞお楽しみ下さい。
劇団芝居屋代表 増田再起
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