湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

トマトとうりん坊

2010年07月14日 | 詩歌・歳時記
山から引いた清水が、飲料水だった。
コンクリートの箱に、なみなみと注がれる冷たく、旨い湧水。
学校から帰ると、先ずは大きな柄杓でひと飲み。汗が、スゥーと引いたな。
それから、朝から浸けてあるトマトをガブリやるのが、夏の日課だった

          美しき水湧く湖北
          おのずから母なる国と
          謝して飲むべし
            
あの頃のトマトは、青臭い匂いがしてたな。
しかも、畑で真っ赤に熟したやつだもの、旨いはずだよね。
キュウリはひたすら曲がりくねり、トゲが手に痛かった。
味噌なんか塗らなくても、キュウリは彼本来の味を主張していたな。
まくわうりなんてのも浸けてあった。種あくまで多く、芳しい匂い。

そして、麦こがしと砂糖少々、水で溶いて、立ち舐めの日々。
ほのかな甘味と麦の香りが素朴な、郷愁誘う味わいだった。

湖北は至るところに、清洌な清水が湧き出ていて、
伊吹山系、鈴鹿山系に囲まれた水の豊かな土地柄ではある。

          掌で受けて谷の真清水飲むために
          たどりきし道
          わけいりし山
   
腹が減ったら、山へ一目散。
野いちご、柴ぐり、あけび。何かしらあって、腹は満たせたな。
いつしか山深くさまよっていたものだ。

ある時、イノシンの親子にでっくわした時は、一瞬に凍りついたね。
母親と何匹かの子供達。
身体の縞模様が確かに瓜にそっくりで、「うりん坊」の名前が実感できた。
が、今はそんなことに感心してる場合じゃない。
恐る恐る後退り、そのあとは一目散。後ろ振り向く余裕もなく、駈けに駈けたさ。

山道駈け降りながらも、うりん坊の可愛いらしさ、目に浮かべてさ。
一時間かけて登った山を、10分そこそこで下ったものだ。

山もまた、川と同様。
学校では決して教えてくれない、様々なことを学んだものだ。
師であり、偉大な先達であった。

          薄墨に山は沈みて
          湖北野は寂しかりしよ
          ひとつ面影

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