法政大学の大学院の講義で、廃棄物政策論を担当している。
前回は、「市町村における廃棄物政策はうまく工夫されているのか」というテーマで、市町村の廃棄物審議会の委員を各地で務めているゲスト講師を招いて、講演をしてもらった。
「市町村における廃棄物政策がどのように異なるのか」、「市町村によって廃棄物政策が異なる理由は何か」、「地域特性に応じて適切な廃棄物政策がとられているのか」について、十分な結論にはいたらなかったため、今後フォローをしていこうと思う。
以下、現段階の私なりの整理を記しておく。
1.市町村における廃棄物政策は、回収方法(分別数・区分、有料化等コスト負担、回収場所、回収方法等)、処理・処分方法(再資源化、最終処分の方法、場所等)等が選択肢となる。
2.市町村における廃棄物政策が異なる理由は、地域特性や財政状況、政治状況等をバックグランドとして、排出される廃棄物の特性、ハードウエア(廃棄物処理施設等)、ソフトウエア(既存計画、条例等)、ヒューマンウエア(住民意識、社会関係資本等)が地域によって異なるためである。さらに廃棄物政策や住民におけるこれまでの施策や活動の積み重ねの結果である、廃棄物政策に対する行政等の取組姿勢の違いもあるだろう。
3.市町村における廃棄物政策は、都市部と農山村部で異なることが必然であり、地域特性に応じて、適切な政策が選択されていればよい。しかし、適切な政策がとられていない場合があれば、それは問題である。
4.では、地域特性に応じた適切な政策とは何か。ここが論じるべき本質的な点となる。この際、地域特性に応じた適切な政策は時間軸で変化するものであり、将来の到達目標、それに至る段階的な工程をセットして、地域特性に応じた適切な政策が論じられるべきである。
4について、例えば、排出量も多く、コミュニティも希薄な大都市の街では、多分別は難しく、大型高性能の焼却施設による処理を行うことが、現状では適切な政策であるかもしれない。しかし、将来的に人口減少も進み、ごみの質が変化していくとき、大型の焼却炉を維持することは不効率になる可能性もある。それを見通して、地域の政策を変えていくシナリオが考えられなければならない。
また、例えば、廃棄物に対する住民意識が高い地域では、徹底したごみの排出抑制とリユースを重視した施策を展開することが、適切な政策となるだろう。ごみの有料化とそれを財源にしたリユース施策の推進に力をいれることもよいだろう。
「市町村における廃棄物政策はうまく工夫されているのか」という設問に戻ると、地域特性に応じた政策の選択が将来シナリオも含めて検討されている状態がうまく工夫されている状態であると考えられる。この意味では、「市町村における廃棄物政策」はうまく工夫されていない場合も多いのではないだろうか。
さて、ここまで考えたところで、次は廃棄物政策に特徴のある特定の市町村に着目し、その市町村の施策がどのような選択されてきたか、また選択された施策はその市町村にとって適切なものであるか、その市町村の将来動向も踏まえたより適切な施策について、どのような目標を掲げ、どのようなシナリオで実現していくべきか、といった点を論じてみたい。