かつて、建築や自動車における板ガラスのリサイクルについて、LCA(ライフサイクルアセスメント)の方法で評価する仕事をしたことがある。LCAとは、原材料の調達から生産、消費、廃棄、あるいはライフステージ間の輸送といったモノのライフサイクル全体の環境負荷を評価するものである。この際、環境負荷はCO2で評価することとし、「現状シナリオ」と「リサイクルシナリオ」の2つを比較することとした。
LCAにおいて、重要なことは、出口が異なるシステムを比較しても意味がないということである。
例えば、「現状シナリオ」では、ライフサイクルの最期が埋め立てになるが、「リサイクルシナリオ」ではリサイクル素材を使った板ガラスが出口になる。この2つをそのまま比較すると、「リサイクルシナリオ」では、リサイクルのための中間処理や輸送のためにCO2を排出することになり、リサイクルを行う方が環境負荷が高いという計算結果になる。
このため、出口を揃えるために、「現状シナリオ」では、「リサイクルシナリオ」の場合に出口でできる板ガラスと同じ量をリサイクルをせずに生産した場合のライフサイクルを設定し、それを「拡張部」として追加する。
つまり、比較する2つのシナリオのライフサイクルは次の通りとなる。
「現状シナリオ」
中間処理への輸送 + 埋め立て + 拡張部(バージン原料による板ガラスの生産)
「リサイクルシナリオ」
中間処理への輸送 + 一部埋め立て + 再生ガラスのガラス工場のへの輸送 +再生ガラスによる板ガラスの生産
なお、再生ガラスによる板ガラスの生産は、再生ガラスだけではなく、バージン原料と混ぜて生産を行うことになる。
こうした出口を揃えたシステムにして、比較をすると、リサイクルを行った方が、CO2の排出が少ないという結果になった。これは、リサイクルのための輸送等で排出量が増える側面もあるが、再生ガラスを使うことでガラス生産における排出量が減り、その収支として排出量がマイナスになるためである。
このように、LCAによる比較方法を理解しないと、リサイクルで環境負荷が増えるという乱暴な見方になってしまう。
ここでは、ライフサイクルの比較において、出口を揃えるために「拡張部」を追加するという説明をした。リサイクルによって何かが生産されるとすると、その生産によって代替された分は削減されたことになり、リサイクルによる増分と代替による削減分の収支、すなわち「代替効果」を計算するという説明をしてもよいだろう。