文部科学省科学技術政策研究所の科学技術予測(第9回調査、2010年3月)では、エネルギー・資源・環境、健康・ 医療、その他IT等の分野について、科学技術の実現時期を予測している。
この調査結果から、未来の地域づくりに関連して、筆者が関心をもった点として、次のように抽出した。
●家庭やオフィスで家電機器や太陽光発電、蓄電池等を全体的に制御する家庭用エネルギーマネジメントシステムが普及する(2019年)。
●自動車等のエネルギー多消費型の耐久消費財に対する所有の概念が変化し、リースまたはシェアに置き換わる(2024年頃)。
●街区単位で、自然エネルギー等を活用し、相互に融通しあうような面的なエネルギ利用システムが普及する(2025年頃)。
●情報通信の発達により、仕事がどこでもできるようになり、バーチャル・オフィス(在宅勤務)が主流になる(2025年頃)。
●多世代が交流するコミュニティが形成され、街区や集落規模で生活質を高めるための高品質・長寿命な街区計画(建築・インフラ計画)が普及する(2025年頃)。
●家庭の廃棄物排出負荷を大幅に低減し収集も不要とする、家庭単位の廃棄物処理・循環技術(2028年頃)
ここであげられている技術は、スマートシティや環境モデル都市等で、実証導入が進められているものばかりではなる。ただし、実現時期が2020年代とされている予測項目のうち、リース・シェア、バーチャル・オフィス、高品質・長寿命が街区、家庭内循環等は、まだまだ現実的な導入メニューになっていないともいえる。
総じて、社会変革を伴うような予測項目は実現時期が先になると予想されているとみることもできる。
2020年代に実用化すると予測されている技術をどれだけ先取りできるかが、面白いところで、各都市や関連企業の先陣争いを期待したいところである。実現時期がまだ先と予測されたから、それは今は無理と先送りするのではなく、2020年代と予測された技術こそ、重点課題となるのではないだろうか。
また、詳細をすべて整理したわけではないが、次のような予測項目も面白かった。
●環境に関連する情報(カーボンフットプリント、フードマイレージなど)がほとんどの商品に表示(2019年頃)
●癒し効果の生理的解明による、森林や木材などの生物資源の持つ特性を利用した新たな療法(2022年頃)
● 通勤型農業(生活の省エネ、高齢化対策等を進めるために、農業従事者も地方都市に生活するようになる)(2023年頃)
●高齢者が生活しやすい生活環境が都市にも農村にも公平に整備され、老後の生活拠点を自由に選択できるようになる(2027年頃)
こうした未来技術が本当に国全体のスタンダードになるならば、日本の未来の可能性が広がり、期待できると感じた。
参考:文部科学省科学技術政策研究所の科学技術予測(第9回調査、2010年3月)