サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

環境問題解決への五感アプローチ~居心地学会に参加して

2014年12月07日 | 雑感

 先日、東海大学が主催する「居心地学会」に、藤田盛吉先生に誘われ、コメンテーターで参加する機会があった。テーマは「居心地ビジネス」で、ATMのある場所に匂いを出す実験、快適な音の流れる空間デザイン、アロマテラピー等の具体的な話があった。

 

 そもそも、「居心地」とは、何か。そういえば、2010年にこの学会の立ち上げの際、銀座の喫茶店での会合に顔を出したことがある。その際にもブログを書いたが、訳あって公開しなかったので、以下に引用しておく。

 

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 「居心地学」は、安原喜秀先生が長年にわたり暖め、東海大学でその名まえの講義を持ち、さらに研究を積み重ねてきたテーマである。「居心地」とは何か。ある方は「任意の状況下での心のおちつき、おさまり具合」と言われた。つまり、場所の心地よさだけだなく、社会関係、未来への安心感等も含めて、「居心地」である。私自身のテーマでいえば、森林セラピー、社会関係資本の問題、気候変動という地球の居心地、生物の居心地等も、「居心地」という観点で捉えることができそうだ。

 アメニティとの違いでいうば、それを内包しつつも、現代社会で失われてきた根本的なところを追加して提起するものという議論もあった。経済市場主義や効率重視、競争社会において、常に人は周りと戦い、緊張を強いられる。それに対して、自分が自分らしく、自己を解放できる場が必要とされる。環境までも効率や景気対策に巻き込んでいる社会に、人が生き・暮らすうえでの安心感、さらには充実感・喜び・豊かさ・尊さを提起するために、 「居心地学」の発信が望まれる。

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 人によって様々な定義があり、アメニティとの違いを確認しておくことが重要である。アメニティは人間欲求に対して刹那的な外的アプローチであり、居心地は根本的で、外的アプローチと人間の内的変化とを統合的に捉えるものであろう。認知科学にいう「身体性」が関連するだろうが、ここでは記述しきれないので、指摘だけにしておく。

 

 さて、「居心地ビジネス」のシンポジウムでは、私との接点として、印象に残ることがいくつかあった。

 

 まず、1つは、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)における五感でのアプローチである。エネルギーマネジメントでは、例えば、室温という触感において、暑いあるいは寒いといった不快な状態を回避する際、できるだけ過剰なエアコン消費にならないように、最適制御や見えるかによる誘導を図る。この際、猛暑において、涼しげに感じる音や匂いで、過剰なエアコン消費を抑制するという仕掛けもできるのかもしれない。この質問をサウンドスケープ専門の方になげかけたところ、「人間は音がないと寂しいという理由で、家に帰るとすぐにテレビをつけたがる。しかし、家に帰ると自動的に快適な音が流れるようにすると、テレビをむやみにつけない。」という例が紹介された。スマートハウス、スマートシティにおいても、五感アプローチをもっと取り入れてもいいだろう。

 

 2つめに、質疑のなかで、「人間は自然の中で、本来の自分を取り戻し、居心地の良さを感じる」という話もあった。自然との距離感がある中でストレスが発生し、人を無駄な消費に向かわせ、それがさらにストレスを増大させる。そして、エネルギーや資源の浪費が拡大させる。自然とふれあいの中での居心地を取り戻すことこそ、人間の幸福と環境問題の解決を両立させる、根本的な方向となると、解釈もした。アメニティの追求は同時にエネルギー消費を拡大させ、地球温暖化を進展させてきた。そうした上滑りしたアメニティの実現では人間は満たされず、さらにアメニティを求めてしまう。刹那的な欲求であるアメニティの追求を見直し、人間の内なる部分の回復と本来的な欲求を満たしてくれる空間や機会、さらには生活を取り戻すことこそ、人間の本来の幸福と持続可能な社会を実現していくうえで、もっとも重要なアプローチとなるだろう。

 

以上、これぐらいにしておく。

 

 

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