サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

市民アンケート調査について:若年層の意見を聞くために

2016年08月17日 | 雑感

 某地方自治体の某検討会の委員を引きうけた。その委員会の一環で、住民アンケートを行い、意識や要望を把握するという。私は、「任意抽出でアンケート調査を行っても、若年層の回収率が悪く、若年層の比率が少ない偏ったサンプルになってしまい、そのサンプルの全体集計を行うことでいいのだろうか。若年層のサンプルを多めに抽出するとともに、年代別の集計を行うことが必要ではないか」という意見を出させていただいた。

 

 例えば、私はある地方都市で住民アンケート調査(配布、回収ともに郵送による)を3回実施させていただいた経験があるが、若年層と高年層の回答率が著しく異なるという結果を得ている。表に示すように若年層と高年層の回収率が2倍以上、異なるのである。

 

 このため、A市の調査では、2回目以降、年代別の層化割当抽出によりサンプリングを行った。割当には1回目の調査で得た年代別の回収率を用いた。つまり、年代別の回収率の経験値をもとに、逆算を行い年代別の抽出数を求めた。

 

表 地域住民アンケートにおける年代別回収率の例

 

A市

B市

2009年8月

2012年4月

2016年5月

2016年5月

20代

31.9%

35.3%

29.8%

28.0%

30代

40.2%

45.7%

41.1%

31.8%

40代

53.5%

57.4%

50.3%

37.3%

50代

62.0%

60.1%

60.0%

48.6%

60代

65.1%

75.5%

75.0%

68.3%

全体

52.9%

53.2%

47.0%

40.3%

 

 この提案をもとに、某地方自治体では、毎年実施されている市民意識調査の年代別回収数を整理してくれた。年代別の構成比率(年代別の回収率ではない)は、20代が10%以下で60歳以上が40%以上となっていた。また、年代別のクロス集計等による分析も実施されていないようである。

 

 やはり、市民アンケート調査では、年代別層化抽出は行った方がよい。母集団に対して高年層が多いというバイアスがかかったサンプルの分析では、手続きとして市民の声を聞いたといえても、市民の声を把握したとはいえない。また、年代別のクロス集計等による分析により、年代別の回答傾向の相違を明らかにした方がよい。選挙でもそうだが、検討会においても高年齢の委員が中心になりがちであり、年代別(特に若年層)の回答傾向を明確にすることが必要である。

 

 なお、若年層の構成比率が少ないサンプルの場合、母集団と同じ構成比率になるように、重み付け(ウェイトバック)を行うことも考えられる。ただし、母集団で高齢者が多い場合、限られた予算で実施される調査では、回収サンプルでは若年層の絶対数が少なく、年代別の統計的な分析を行うことが困難な場合が多いと考えられる。年代別のクロス集計等を行うことを考えると、若年層の数が一定以上、得られように調査規模を大きくすることも必要である。

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