地方自治体における地域環境基本計画の策定について、疑問を持つことが多い。調査や下書きの作成、意見反映等を委託先であるコンサルタントに投げ、綺麗な計画書が印刷されるが、それで本当にいいのだろうか。
地域環境基本計画は策定の仕方、使い方次第で効果的なツールとなるという立場から、地域環境基本計画の良し悪しをチェックするポイントを列挙してみる。
1.将来の望ましい地域の環境像を具体的(できれば定量的)に示し、それを実現するために必要となる施策をバックキャスティングで組み立ているか。
環境基本計画は10年後を目標年次とし、その実現に向けた施策を示すものである。既存施策を整理し、あるいは上位計画や他関連計画を再整理するだけなら、実施計画でよく、基本計画である必要はない。10年後の目標は、関連する地球や国の長期動向を整理し、これまでの成り行きによる地域の姿を分析したうえで、達成したいと思わせるような夢のあるものにしたい。そして、その夢の水準を達成するための施策群を組み立て、これまでの施策に追加すべき新規施策を追加していくことが重要である。
2.環境基本計画の策定のために、様々な立場の地域内の事業者や地域内の住民の参加を行っているか。
この際、重要なことは、特定の熱心な住民だけでなく、日無関心層にも環境基本計画の策定を知らせ、参加を得る工夫を行うことが重要である。環境基本計画の策定自体が普及啓発効果をもたらすことが重要である。また、既に環境関連活動を実施している熱心な住民には、行政施策への意見をもらうだけでなく、自らが次に行う活動を整理してもらう機会を設け、それを支援する行政施策につなげることが考えられる。
3.庁内検討会だけでなく、域内外の大学や専門研究機関等の第三者の意見を聞き、反映しているか
環境基本計画の策定は、環境審議会で審議するが、個別専門的な検討を審議会で行う時間はなく、行政部局が集まる庁内検討会と、市民が参加する市民検討会、さらには専門家による検討会を設けて、検討を行うことが必要である。特に、専門家による検討会は、第三者として、長期的視点、専門的視点を地域施策に持ち込むうえで必要である。
4.行政自身が環境政策のステージにチャレンジする意欲を持っているか
地域の大気や水等の環境質の向上、生物多様性、廃棄物、地球温暖化防止等のこれまでの地域施策に加えて、放射性廃棄物、地域エネルギー、気候変動適応策等の新たな取り組み課題は常に追加されるべきである。この際、環境分野だけでなく、エネルギーにかかる施策を積極的に位置づけること、またリスク管理という観点から、防災・安全の分野も含めて、地域にかかるマルチなリスクを想定し、分野横断的な施策を創出していくという積極性が期待される。
5.地域環境経済力、地域環境社会力を高める行政施策を盛り込み、重視されているか
環境施策は行政予算だけで行うものではない。ビジネスとして行うもの、住民や事業者の社会意識に基づき主体的に行うものを積極的に行政施策に位置付け、それを支援することが重要である。つまり、地域環境ビジネス(環境コミュニティ・ビジネス)による地域環境経済力、主体の意識や主体間の連携による地域環境社会力を高めるような施策を方向づけ、具体的な施策を示すことが重要である。
6.地域での普及に真剣に取り込もうとしているか
環境施策における普及啓発の施策は、実施することを意義とし、成果をあまり求めていないようにもみえる。普及啓発の手法については、環境心理学や環境マーケティングの方法が有効であり、それらの知見も借りて、趣味や嗜好、環境意識の程度、帰属集団等が異なる様々な対象に対して、戦術をたてて、普及啓発を行うべきである。環境問題の発生源が不特定多数となり、誰もが加害者である今日、普及啓発こそが地域行政が担うべき重要な仕事である。
7.計画の進行管理や報告、状況に応じた施策の改善を柔軟に行う仕組みやルールをつくっているか
地域によっては、環境基本計画の実施状況を第三者がチェックする仕組みが不十分であったり、地域の環境白書に相当する施策やその効果の方向が不十分な場合がある。また、施策は常に修正・追加をするべきであるが、固定され、前進のない施策を継続していることが多い。環境基本計画に示された施策であっても毎年、新たな改善を求めることが必要ではないか。施策効果があがらない場合は、施策目的に応じて、担当が第三者の意見を聞いて、施策を改善する必要があることを、環境基本計画に示すべきある。
以上。