サードウェイ(第三の道) ~白井信雄のサスティナブル・スタイル

地域の足もとから、持続可能な自立共生社会を目指して

持続可能な地域づくり ~これまでの仕事とこれからの仕事

2009年01月01日 | 雑感
写真:植えたばかりのビオラ


振り返ってみると、1990年代の半ばから、「持続可能な地域づくり」をテーマにした仕事をしている。

◆里地からの変革

最初の頃の仕事は、「持続可能な地域づくり」の具体像を共有するため、事例調査やモデルプランづくり、原則や理念の整理等が行うものが多かった。「里地からの変革」という書籍を作成する元となった研究会では、宮崎県綾町、山形県長井市、高知県中村市等を先進事例とし、「環境保全と地域活性化を両立させる」姿を描こうとした。重要なことは、「継続と波及」であると指摘した。

■持続可能な農山村・圏域

また、国土交通省の委託調査で、「持続可能な農山村」あるいは「持続可能な圏域」のあり方をテーマにした仕事を5年間程度実施した。持続可能な地域の基本方針として、「バイオマス等の再生可能な資源の利用」、「地域内循環」、「脱物質化・サービス主導」、「住民参加」等を整理したものであった。

■第二次環境基本計画

環境省の委託調査で、「環境保全型国土・土地利用のあり方」を検討し、それが第二次環境基本計画における「環境からみた地域のあり方」検討会につながった。「持続可能な国づくりのために、持続可能な地域づくりが重要性である」と位置づけられた。

行政分野縦割りになりがちな土地利用関連制度を、環境面から横断的に捉える制度を検討していたら、それが地域づくりのあり方の検討にすりかわった。おかしな仕事だった。

■第三次環境基本計画

第三次環境基本計画では、重点プログラムの1つである「環境保全のための人づくり・地域づくりのあり方」の検討にも、環境基本計画のロジ業務の委託先として参加することができた。この重点プログラムは、環境学習関連施策と環境面での地域づくりを一体として捉えた画期的なものである。

長年関与をさせていただいたトヨタ自動車の社会貢献活動「トヨタの森」計画の基本コンセプトは、「森づくり・人づくり・地域づくり」である。それと環境省の重点プログラムの方向は合致する。

■地域資源の活用

国土交通省の委託調査を「地域資源活用術」という書籍にしたが、これは地域資源という切り口で、「持続可能な地域づくり」を捉え返したものである。愛知県足助町、高知県梼原町、宮崎県諸塚村等の事例を詳しく紹介し、「あるものをいかし、できること成す」ことの大事さを整理した。

その後、この書籍をもとにして、開発途上国の行政職員向けの研修事業が企画され、ブルガリア、中央アジア、インドネシア、東南アジア等向けの研修講師を毎年務めさせてもらっている。

■「環境情報科学」の特集

2005年に、学会誌「環境情報科学」の編集委員として、「持続可能な地域づくりの潮流と戦略」という特集を担当した。この巻頭言を内藤正明先生に書いていただいた。この特集から、持続可能な地域づくりにおける課題として、「地域の主体の自発性」と「地域経済・産業の自立化」の2点を抽出することができた。

ちなみに環境情報科学の最新号で「農のある未来」という特集を担当をした。これも、農系システムの再構築という観点から、「持続可能な地域づくり」の動向を描こうとしたものである。再び内藤先生に巻頭言を書いていただいた。



そして、今年度、「持続可能な地域づくり」に関するいくつかの調査研究を受託させてもらった。

■地域環境力の指標化

1つは、「地域環境力」を指標化することを目的とした環境省の委託調査である。この調査は、第三次環境基本計画における「環境保全のための人づくり・地域づくりのあり方」に関する施策の進行管理をするための指標開発として、位置づけられるものである。

私は、係る施策の目標は、「地域環境力」の形成にあると考え、「地域環境力」を「主体の力」と「主体間の関係の力」の2つの側面で整理した。
前者は、住民やNPO、企業、行政といった各主体の意識・行動の力をさす。後者は、ソーシャル・キャピタルに相当するもので、住民、NPO、企業、行政等の相互の信頼や連携の状況を示す。

■地域循環圏(地域リペア圏)

2つめは、近畿地域における「地域循環圏」に関する調査である。「地域循環圏」は、第二次循環基本計画で示されたテーマであるが、循環の空間スケールの適正化とともに、循環に係る主体間の関係形成を重視し、もって人づくり・地域づくりにつなげようというものである。

近畿地方環境事務所の環境ビジョン検討調査を昨年度から実施する中で、近畿地域における地域循環圏の検討に関する調査も受託させてもらった。

私としては、循環といってもリサイクルだけでなく、リユースやリペア等といった観点からの地域圏の形成という施策を検討できればと考えている。別途、環境省からリペアの実態調査を受託しており、それと上手く連動できればよい。

■環境コミュニティ・ビジネス

3つめは、「事業型環境NPO」に関する調査である。環境NPOにおける経済事業を支援するための中間支援組織のあり方を検討するものである。12月に入ってからの受注で、どこまでできるか。中小企業診断士や商工会等とも連携して、地域における経済事業を環境省なりに支援する方向を目指すもので、環境省の新たなチャレンジに役立つ成果を目指したい。

別途、信州大学が環境省から受注している教材開発プロジェクトで、環境コミュニティ・ビジネスというテーマを担当している。

私としては、固定人件費の確保を狙いとするような収益事業ではなく、地域経済の活性化に貢献できるような地域における環境ビジネスの振興に関心がある。


他にも、昨年度から東海大学の非常勤講師として担当している「地域環境経済論」、ようやく離陸しつつある博士論文(テーマ:地域における環境配慮の普及過程と地域施策の戦略的なあり方)も、「持続可能な地域づくり」研究の一環として実施しているものである。

シンクタンクの仕事をしていると、研究会等での研究者の見識や、地域における実践活動の面白さから、ついつい勉強をする側で満足してしまう。しかし、「持続可能な地域づくり」というテーマに長年関わらせてもらったお返しを、そろそろしなければならないと思っている。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 仕事納め ~阪大環境工学同... | トップ | 環境文化都市・飯田の地域環境力 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

雑感」カテゴリの最新記事