「環境科学」ではなく、「環境工学」、さらには「環境学」が大事だと教えていただいたのは、大学時代の恩師(末石冨太郎先生)である。「環境科学」は環境に関する現象解明、「環境工学」は環境科学の応用、「環境学」は工学だけでなく、社会や経済に関する学問も統合する。
これは、理学や工学を中心に捉えれた考え方であるが、「環境社会学」や「環境経済学」も各々の専門性を軸としつつ、「環境学」を志向する方向性が重要なであろう。社会学あるいは経済学という学問領域に収まる自己完結性にこだわりすぎてはいけないだろう。
また、環境問題の解決には、個別要素ではなく、要素がつながるシステムにおける最適性を求めることが重要であるという観点から、「環境システム」というアプローチも重要だと教わった。これは、学際的、統合的であるということではなく、システムとして包括的に捉えることを言っている。この場合のシステムは、環境系だけでなく、人間系、人間―環境系も含めたものである。
ただ、「環境学」も「環境システム」的アプローチも、環境問題の解決や環境社会の創造にどれだけ貢献できているのだろうか。環境問題解決のための行政施策や企業行動、生活行動に役立つようなもっと実践的な学問も必要なのではないだろうか。
「環境問題解決学」あるいは「環境社会創造学」にはいくつかの要件が必要となるだろう。列挙してみる。
・問題の解決や創造が必要とされる現場を持つこと
・解決行動等の実施・評価・見直しを支援すること
・実践の最適解を見出す中で、目先の範囲に囚われずに、見落とされがちが長期的視点・俯瞰的視点を持つこと
・基軸となる学問分野や専門性を持ちつつもそれにこだわらずに問題事象に応じて必要な学問分野を組み替えて統合(コーディネイト)すること
・将来世代や他地域の視点と現世代・現場の視点を統合する方法をもつこと。
・解決行動等の実装のために多様なステークホルダーの分析や調整を行うこと
・現場への普及啓発や人材育成に貢献すること、問題解決の主体形成を図ること
・現状肯定的なものならず、常に未来を構想し、それに向けて変革的であること
・得られた知見や方法論を常に進化させていくこと、常に刺激をえて柔軟に自己組織化ができること 等々
上記のような方向性をさらに具現化してみたい。