*****ご注意!!一部ネタバレの可能性があります!*****
今年最初の読書記録となるが、読んだのは昨年末
2023年最後に読後感が良く、とっても心に残る1冊を手にすることができました
筆者 椹野 道流が20代の頃、80代の祖母とロンドンに行く豪華旅行記、と思って読み始めました。
確かにファーストクラスの飛行機、(恐らく)最高級のホテルのジュニアスイート、などなど豪華である一方、ネットもスマホもない時代に祖母の通訳兼お世話係で奮闘する筆者の姿が海外旅行の苦労や楽しさを思い出させてもくれました。
筆者が気づくCAやバトラーのサービス精神も読みどころでもあります。
しかし、本書の一番の魅力は祖母が筆者に諭し残す金言だと思います。
本書は筆者の小説投稿サイト(ステキブンゲイ「晴耕雨読に猫とめし」)に投稿された”自己肯定感の話”を加筆修正したもの。
”自己肯定感の話”と題されたように、自己肯定感が高い祖母が登場し、その祖母とのロンドン旅行記、、、となるのですが、
旅の途中で祖母から、自分の外見にコンプレックスを感じながら化粧(自分磨き)をぞんざいに扱う筆者は諭される。
「何もしないのは自分を見捨てて痛めつけているようなものよ。(中略)もっと綺麗になれる。自分を信じて努力して、その結果生まれるのが、自信よ」
ほかにも、
祖母が筆者に旅行の御礼と記念にカメオのブローチを買ってあげる下り
(他人に選んでもらったこと自体が値打ち)
帰国便を待つ空港のラウンジで、自信のなさから自分を卑下する筆者へ
(謙虚と卑下は違うものなの。自信がないから、自分のことをつまらないものみたいに言って、相手に見くびってもらって楽をしようとするのはやめなさい。それは卑下。)
また担当バトラー ティムとの交流も心温まるものでした。
ネットで情報収集ができる昨今、自分はなんでも知っているとつい奢った気になってしまうのですが、年長者やそのプロの方からは学ぶことが多いと改めて気づいた一冊でもありました。
初出 ステキブンゲイ
「晴耕雨読に猫とめし」
自己肯定感の話①~⑲(2022年6月~10月)を加筆修正の上大幅な書下ろしを加えたもの
2023年4月25日初版第一刷り発行
2023年10月第七刷り
装画 木村セツ
装幀 須貝美華