*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
半沢直樹シリーズの池井戸潤さんは「陸王」という陸上シューズに挑戦したメーカーを題材にした作品も書いていて、既にテレビドラマ化されている
今度の舞台は正月の人気スポーツ箱根駅伝
10月に行われる予選会で本戦の出場権を得られなかった大学から選出された選手で構成される学連選抜にスポットを当てた物語
上下巻あり
上巻は予選会敗退から学連選抜チームが箱根本番を迎えるまでの日々
下巻は箱根駅伝の往路・復路を各区間毎に丁寧に描く
レースの様子は沿道のスポットなども描かれていて、箱根駅伝好きは脳内にレースが展開できることだろう。
手に汗握る展開でもあり、ぐいぐい読ませてくれる
一方で改めて学連選抜ってどうなの?と問われている様にも感じた
特に上巻で展開された学連選抜の不要論、参加するだけのチームと軽視する論調
本作品では、学連選抜の甲斐監督の緻密かつ冷静な采配と各ランナーが意地とプライドをみせる走りで学連選抜の存在感を印象つけるストーリーだが、現実となると本作品のように各区間、特に5,6区のエキスパートがいないとなかなか難しいと思う。
また甲斐監督も元来分析力が優れているとはいえ新監督就任という事情が学連選抜に注力できたのだから、自分のチームを持っている監督に甲斐監督のような対応を求めるのは現実的でないと思う。
つまり、学連選抜って多くの箱根駅伝を目指す大学生ランナーにチャンスを与えるという理念は素晴らしいけど、チームを作ったところで満足してしまって、運用・運営にまで力が及んでいない。
参加するだけ、走るだけなら、「学連選抜チームの代わりに本戦出場校の枠をひとつ増やした方がマシ」と言った作中の監督の言い分も一理あると思う。
学連選抜専任の監督・スタッフを準備するわけにもいかず、、、
なんとも難問だなぁと思った
2024年4月25日第一刷発行
初出 週刊文春 2021年11月11日号から2023年6月15日号
装幀 岩瀬聡
装画 田地川じゅん