腫瘍内科医一家のニューヨーク滞在記

ニューヨーク研究留学中での出来事を感想を交えてメモ代わりにつづります。

東京でのエネルギーを注入される。

2011年08月16日 12時14分26秒 | 日記

かつて、化学療法後の骨髄抑制後の好中球減少症の回復を早めるG-SCFという薬剤を製薬会社側から臨床開発に関わり成功させたSさんが、別件で滞在先の病院を訪問された。(抗がん剤を打った後に血液が減ってしまうが、好中球という感染症に最初に戦う血球を数日間はやく回復させる薬のこと。)この薬のおかげで、骨髄移植、大量の抗がん剤投与がより安全に施行できるようになった。今や、我々にとって必須の薬である。

Sさんから、「せっかくなので少しお話をしませんか。」と、赤坂のB♭(ビーフラット)で行われたジャズピアニスト野瀬栄進さんのソロピアノライブに誘っていただいた。開演前、Sさんの10年来の知人だと種明かしをされ、野瀬さんを紹介していただいた。彼は、約20年間NYに在住し、年齢も一歳しか変わらない同年代だとわかりとてもうれしい気持ちになった。

 ミュージシャンとして20歳で単身アメリカに乗り込み、NYで最高レベルのジャズピアニストに師事し、自分を磨きつづけオリジナル曲を認めてもらうべく勝負するという生きざまは、やはり素直に応援したくなってしまう。20歳の若者が、何の保証もなく単身アメリカに乗り込み、20年間活動を継続している。道は違えども、あまりにも青かった自分自身の20歳のころを振り返り、彼の度胸と決断に敬意を表さざるを得ない。私は、昔から単純すぎるほどの感動屋さんなのである。

ニューヨークのイーストビレッジあたりには、同じ日本人であると名乗られるのが恥ずかしくなるような「お前ら一体こんなところで何しとんねん。おとうちゃん、おかあちゃんが泣いているぞ。」などと、余計なひと言をいたくなるような若者も結構見かける。また、余計なことを言ってしまった。(苦笑)

この日、周りの方の話を聞いていて、人間ってどの道に進んでも同じなんだと改めて納得する場面があった。「日本人は自分が本当にやりたい、やるべきと思うことをしている人が少ないのではないか。」「自分が心から正しい、世の中のためになると信じたらとにかくやってみる、という姿勢に欠けているのではないか。」

 この日は、主におなじみThelonious Monkの楽曲が前半に披露され、休憩をはさんだ後半からは、彼のオリジナル曲が披露された。音楽に入りこんで、所謂トランス状態で演奏している彼の世界に大いに引き込まれた。同年代の人間が尋常でないほどエネルギッシュに演奏する姿を間近で見せつけられて、自分も鼓舞されないわけがない。

やはり、音楽はライブに限るのである。