腫瘍内科医一家のニューヨーク滞在記

ニューヨーク研究留学中での出来事を感想を交えてメモ代わりにつづります。

ニューヨークの洗礼 その2 やられた!

2010年03月19日 06時00分00秒 | 日記
 研究留学をしている人、これからしようとしている人に予め知っておいていただきたい事例を少し。先輩から同じような話を聞いたことがあり、ある意味この世界では当たり前かもしれないが。
 
 昨日、研究室のミーティングがあった。
 研究所のチェアマンも出席したその席で、なんとなんと、あるテクニシャンの実験計画が、先日自分がしたい実験内容としてラボのメンバーに提案したものほとんどそのままであった。もちろん、自分は最近忙しいので、番頭さんが配慮したと言えば聞こえはいいが、こちらに一言もなくいきなりテクニシャンに指示を出していたとは完全に意表をつかれた。
 
 この世界では、テクシャンが「番頭さんの指示」で実験をすることは、でてきたデータは番頭さんのものになることを意味する。まあ、たいしたデータが出てこないだろうが。

 チェアマンの前で、愛想を振りまきながら説明する番頭さんはある意味すごい。なるほど、科学的能力がそれほどなくても、出世するにはわけがある。あとで遠慮がちにテクニシャンが、番頭さん自身が実験の仕方がよくわからないから、私に細かい実験内容のアドバイスをもらうように指示したとのことで、実験計画を記したプリントを持ってきた。
 その時本当に時間がなかったこともあり、「ごめんね。今時間の余裕がないので、後で見るから詳細をメールで送ってね。」と、とりあえず一呼吸置くことにした。

 ここで切れたら、こちらの負け。
  
 テクニシャン自身には何の罪もない。彼女は上司の指示を忠実に実行しているだけ。
 番頭さんにどのようにクレームをつけるか、少し頭を冷やしてから考えることにした。
 してやられた後で揉めるよりは、本命の仕事ではなく、単なるショートプロジェクトの一つぐらいにしか思っていなかったので、今回は引き下がるのも一つの手かもしれない。

 当たり前だが、仕事の結果と人間性は全く関係ないのである。
  
 こちらに来る前、中国やインドから来た研究者の中にはすさまじい!?人がいるから、いい意味で負けないように自己アピールできるように頑張らないと行けないと言われたことが思いだされる。もちろん、前にも記したが多くの中国やインドの方々はいい人なので決して誤解しないでいただきたい。
 
 一般の日本人的な感覚ならあり得ないが、研究の世界ではどんな手を使っても先に実験をしてデータを出したもの勝ちという空気がたしかにある。
 極端な例では、実験ノートを机の上に忘れようものなら、データが盗まれ、知らないうちに自分のデータで論文が発表されていたなんでこともあるらしい。こちらにきて、帰宅時には机の鍵を毎日閉めるか、実験ノートを毎日持ち帰るようにアドバイスされた。

 いつまでも、わきの甘い自分のままではいけないと痛感。
 今回の件は、第三者的には情報管理という面で隙があったということなのであろう。
 もっと仕事のスピードと精度だけでなく、人との交渉力を上げていかないとここでは通用しないのだろう。しかし、関西弁で言うところの「こすい」奴になり下がってしまっては、こちらに何を勉強しにきたかわからない。

 ノーベル賞学者から、口のうまいペテン師タイプまでありとあらゆる人間が混ざっているのが今の職場。
 またまた、ニューヨークの洗礼を受けるはめになった。

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2 コメント

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本命のプロジェクトじゃなくて良かったね(^^) (橋本クリニック)
2010-03-19 12:27:37
本命のプロジェクトじゃなくて良かったね。
(本命のものであればそこまで話さないとは思うが・・・。)

何にしろ大きな問題にならないようなプロジェクトなら、いい授業料として差し出すのも一興。
今後は話す内容も吟味しなければいけませんねぇ(><)
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ありがとうございます。 (管理人)
2010-03-22 11:01:27
 ある官僚出身の方がおっしゃっていましたが、我々日本人は、長い歴史の中で他国と戦うことが極端に少なかったためか、ある意味、良くも悪くも人を疑わない「人間性善説」的な考え方が染みついているのかもしれません。
 
 でも、私はどんな人とでも、わかりあえる可能性があるとの思いを捨てずに、人間関係を形成していきたいと思っています。
 
 でも、脇はもう少し締めていきます。(笑)

 
  
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