博多住吉通信(旧六本松通信)

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デュアルユースの問題 2

2016年03月20日 | 旅先

 デュアルユースの問題が取りざたされるようになった理由は、昨年防衛省が創設した「安全保障技術研究推進制度」があります。28項目の基礎的な研究テーマを提示し、大学や独立行政法人、民間企業の研究者からの提案を公募ました。研究成果は、国の防衛や災害派遣、国際平和協力活動などで用いる装備品の開発につなげるほか、民生分野でも活用される。防衛省は研究成果の公開を原則としているそうです。採択されると最大で年3千万円の研究費が支給されるそうです。この公募には東京工業大や岡山大など少なくとも16大学が応募したそうです。

 日本の大学は第二次大戦時の戦争協力への反省から、軍事研究は行わないということを基本としてきました。科学者の国会とも呼ばれる日本学術会議は1950年と67年に戦争を目的とした研究は行わないとの声明を発表しています。

 こうした状況を、どう考えるべきかはかなり難しい問題です。軍事と民生の境界はかなり曖昧だからです。元々は一体で不可分のものだったと言っても間違いはないのです。そもそも昭和20年の終戦時には日本の産学官の研究開発活動は軍事一色でした。猫も杓子も100%軍事研究をやっていたといっていいでしょう。その後の日本の研究開発の歴史は終戦から25年くらいの時間をかけて軍事の民生転換を進めていった歴史でもある訳です。たとえば隼などの戦闘機を製造していた中島飛行機が戦後、富士重工業となり航空機生産の技術を生かしたスバル360などの自動車生産で成功した事例は有名ですし、照準器や測距儀などの光学兵器を生産していた日本光学が戦後家庭向けカメラの生産を行うニコンに生まれ変わったなどの事例も有名です。こうした事情は大学等研究機関も同様で、東京帝大は航空機研究や火薬研究のメッカでしたし、理研の仁科博士が原爆の研究を軍部からさせられていたことも有名です。

 以上の歴史から学べることは多いと思います。豊富な研究資金を活用できる軍事研究は一定の成果を生み出すことはできるが、民生転換ができないと結局発展はできないとか。長い目で見て軍事研究が何をもたらすかを私たちは良く考えてみる必要があるでしょう。


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