上の写真は2016年9月6日に、東欧のブルガリアの黒海沿岸にある世界遺産都市ネセバルを訪れた際に市内で見かけたトラバントです。その古びた様子から、どうも放置車のように見えましたが、ナンバープレートは付いていました。市内では実際に走っているトラバントは見かけませんでした。
昨日の本ブログ記事で、1983年当時の旧東独でのトラバントの様子をご紹介しました。トラバントと西独のフォルクスワーゲン、ベンツ、アウディとの技術水準の比較から、東独の工業生産技術の絶望的なまでの低さをその時実感したことでした。このことから東独の未来は余りなさそうだと思ったのですが、その予感はわずか6年で的中しました。1990年に東西ドイツが統合され、東ベルリンを「壁」で囲み約1600万人の国民の言論・思想・結社の自由を否定したドイツ民主共和国は「壁」とともに姿を消しトラバントの生産も停止しました。トラバントの排気ガスははっきりと人体に有害であることが実感できるほどひどかったですし、2サイクル機関はとにかく騒音がひどかったのです。もう耳を塞ぎたくなるほどでした。これに比べると西側の自動車はほとんど無音といってもいいと言えるくらい静粛でした。
東西ドイツが統合し30年が経ちましたが、興味深いことにトラバントは今でも多くの愛好者を抱えているのだそうです。約十年前の毎日新聞の記事ですが、環境規制にことのほか厳しいドイツでは、特別に2種の旧車が公道の走行を許されているそうです。一つはフォルクスワーゲンビートルの旧型(いわゆるカブトムシ型)で、もう一つが何とトラバントなのだそうです。歴史文化財としての登録が必要だそうですが、およそ3万台のトラバントが登録されているそうです。トラバントは「だれにでも修理できる単純な造りと部品の入手のしやすさが人気の秘密」なのだそうです。同記事のソースです。⇒ http://mainichi.jp/select/world/news/20101122ddm012030052000c.html
またトラバントを電気自動車化(エレクトリック・コンバージョン)して復活させようという試みもあるそうで、「Trabant nT」と命名され2012年に実際に販売する準備が進められていたそうです。ソースです。⇒ http://www.trabant-nt.de/374/en/the-project/trabant-nt.aspx
このようにトラバントは生産終了から30年が経過しても、しぶとく生き残っているようです。構造がシンプルで自分でも手間をかけて動かせるようになりそうだし、EV化も自分の力でできそうだと思わせるところが魅力なのでしょう。