(昨日の続き)
アメリカの製造業が空洞化し、かつて活気のあった重工業地帯、特にデトロイトのような大都市の中心部が廃墟のようになり、失業者があふれている。そういう衰退地域をラストベルト(錆付いた地域という意味)と呼ぶそうです。工場や機械類が放置されて錆付いているというイメージです。そういう地域で貧困にあえぐ人々がトランプ氏に投票したと報道ではされています。日本も1985年のプラザ合意以後、円高による製造業の海外移転で産業の空洞化や地方の衰退が進んだことはよく知られている通りです。
産業構造の転換自体は、20世紀以前からあって、農林漁業⇒繊維などの軽工業⇒重化学工業⇒IT等サービス業という具合に転換が進んできました。一つの産業が衰退したあとは、新しい産業が雇用を吸収し経済成長を続けたのです。現在のアメリカは、重化学工業はメキシコや中国に移転しアップルやグーグルなどITなどサービス系産業に中心が移っています。こうしたことの何が問題かといえば、生まれてきた新産業が十分な雇用吸収力をもたないことや、旧産業から新産業への人材の移動がうまくいかないといった理由が考えられます。他にもあるのでしょう。
そうだとすれば、本当にそうしたことが理由なのだとすれば、こうした部分に政策のメスを入れるべきではと思います。新産業の雇用吸収力を挙げるためにワークシエアリングを推奨する法人助成策を進めるとか、雇用訓練を推進して人材の移動を円滑にするとか、たとえばそんな政策が考えられます。それにラストベルトといっても全部の工業都市が衰退している訳ではありません。たとえばピッツバーグという、かつて鉄鋼生産で世界一になった工業都市は一時安価な輸入鉄鋼に押されて1980年代に人口が半減し経済も低迷しましたが、ハイテクやサービス系への産業転換を進め、地域経済を回復させ2008年の金融危機でも雇用減少はアメリカ国内の他地域より少なかったそうです。実際にこういう経験をしているのですから何かしら対策はあるはずです。少なくともアメリカとメキシコの国境に壁を作っても何にも解決しません。この程度のことは誰でも思いつくと思うのですが誰も大統領に進言する人はいないのでしょうか。