博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

「サピエンス減少」を読んで(続き)

2025年01月27日 | 読書・映画
(昨日の続きです)
 1960年代から始まった日本の経済成長は、保健・医療の進歩と充実による乳幼児生存率の劇的な向上と平均寿命の延長を実現しました。この結果、少産少死化が進行します。そして経済構造の変化(情報化の進展、サービス業の拡大など)によって個人に求められる種々のスキルが高度化し各個人に高い学歴が求められるようになります。そして昭和60年以降、男女共同参画の進展によって女性の自己決定が尊重されるようになりました。こうした変化の積み重ねが今日の少子高齢化・人口減少に繋がったというのが、ブログ主が理解した著者原氏の指摘と思われます。こうした変化は60年近い歴史の積み重ねと同義であり、これを転換することは至難の業だと思われます。
 これはブログ主の解釈ですが、仮に1990年代初頭のバブル崩壊後の日本で、当時の海部俊樹首相が産業界に向けて何らかの雇用保障政策を推進し、第三次ベビーブームが起こったとしても、その規模は第二次のそれより小さく問題の先送りにしかならなかっただろうということです。以上から理解できることは日本の少子高齢化・人口減少をくい止めることは政策的にほとんど不可能ということになります。このことが、どうやら正しいと判断できる根拠として少子高齢化・人口減少が起こっているのは日本だけではないという事実です。日本と同じように経済成長による社会変動を経験した韓国でも同様に起こっているのです。韓国の合計特殊出生率は2023年に0.72を記録しました(注1)。合計特殊出生率とは分かりやすく表現すれば女性がその一生の間に出産するこどもの数のことです。1であれば一人、2であれば二人です。日本の同年の数字は1.2でした。この数字は概ね2以上ないと人口を同水準で維持できないとされています。日本では1989年にこの数字が1.57を記録。それ以降、この数字を2以上に上げることはできなくなりました。しかし韓国では0.72、0.72人などという人数は0に限りなく等しいです。この数字だけ見ると韓国は1年間に一人も生まれないという状態に近くなっているように見えるということで、これは日本よりも深刻です。韓国も日本と同様に「漢江の奇跡」(上の写真が漢江です 注2)と呼ばれる経済成長を1970年代に実現し、1987年には軍政を脱却し民主化を実現。個人の自己決定権の拡大を実現しました。2025年現在、一人当たりのGDPは日本を追い抜いています。こうした変化が上記の0.72という数字に現れているのでしょう。
 以上の経緯から分かることは個人の自己決定権の拡大が少子高齢化・人口減少の主要な原因であり、これを変えることはほぼ不可能ということです。ちょっと想像してみてください。女性の自己決定権を剥奪して、国家権力によって女性に妊娠出産を強制するという事態を。考えただけで鬱になりそうです。こんなことをやろうとしても、それ以前に日本という国家の土台が崩壊しそうです。
(注1)https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/3c50c9308a0bfb63.html#:~:text=%E3%81%8C%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%AB-,%E9%9F%93%E5%9B%BD2023%E5%B9%B4%E3%81%AE%E5%90%88%E8%A8%88%E7%89%B9%E6%AE%8A%E5%87%BA%E7%94%9F%E7%8E%87%E3%81%AF0.72%E3%80%81%E5%A5%B3%E6%80%A7,%E5%AD%A6%E6%AD%B4%E5%8C%96%E3%81%8C%E8%83%8C%E6%99%AF%E3%81%AB
(注2)Wikipediaから引用させていただきました。

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