
ここで「あかつき」の先輩探査機を一つご紹介します。旧ソ連の探査機ベガ1号とベガ2号です。この2機の探査機は1986年に地球に接近したハレー彗星を探査したことで有名で、そちらの功績で記憶されている方が多分多いと思うのですが、実は金星も探査していました。この2機の探査機は1984年12月15日と12月21日に打ち上げられました。両機はハレー彗星に到着するおよそ9か月前、ベガ1号が1985年6月11日、ベガ2号は6月15日に金星に到着し、それぞれ、着陸機(ランダー)と気球(バルーン)探査機を金星大気中に放出しました。ベガ2号着陸機は金星表面への軟着陸に成功し、摂氏500度、90気圧の焦熱地獄に56分間耐え様々なデータを地球に送信しました。
ベガ探査機にはもう一つ、宇宙開発史上最初の惑星気球探査機が搭載されていました。私はこの気球探査機がとても好きで34年後の今も心に残っています。探査機のバルーンは直径3.54mの球形で、ヘリウムが満たされていました。重さ6.9kg、長さ1.3mの分析装置を搭載したゴンドラが13mの綱でバルーンに吊されており、全体の質量は21kgだったそうです。ゴンドラの上部には、高さ37cm、直径13cmの円錐アンテナが取り付けられ、アンテナの下には、無線送信機とシステム制御装置が積まれていました。気球は金星の夜の面で放出され、地上から5万メートルの高度を昼の面に向けて飛行しました。バッテリーが尽きるまでの46時間にわたって金星大気上層の気温、気圧、風速、密度の観測データを地球に送信しています。この高度では、気圧や気温はほぼ地球並でしたが、風速はハリケーン並(この風がスーパーローテーションです)で、大気の成分は主に二酸化炭素で硫酸や塩化水素、フッ化水素も混じっていたそうです。
上の写真はベガ気球探査機のモックアップです。https://en.wikipedia.org/wiki/Vega_program から引用させていただきました。