ミトコンドリアの働きを活性化すると寿命も延びる?
結論から言うと、延びます。寿命研究の実験によく使う線虫という生物がいるのですが、線虫の場合、ミトコンドリアを活性化させるピルビン酸やオギザロ酢酸を添加すると数10%も寿命が延びます。
逆に解糖系を活性化するブドウ糖や果糖を添加すると寿命が短くなります。ですから解糖系を使うよりも、ミトコンドリアを使ったほうがずっと健康長寿でいられます。(佐藤拓己教授 )
寿命というのは実質臓器がダメになるよりも、よりもむしろ血管がダメになって尽きることが多い。たとえば脳溢血も狭心症も、臓器そのものではなく血管がダメになって起きる疾患です。ですから私は血管さえ老化させなければ少なくとも寿命は100歳まで伸ばせるのではないかと思っています。
そして先ほど説明したようにミトコンドリアが活性化すると細胞も活性化して血管は若く保たれるため、「人はミトコンドリアと共に生きる」というのが私の研究と人生の持論なのです。 ミトコンドリアを活性化させるものには、先ほど述べた有機酸の他にケトン体というものがあります。
ケトン体というのは、主に「β−ヒドロキシ酪酸」という物質なのですが、これは食材には含まれておらず、中性脂肪を原料に肝臓が創りだすものです。通常、人間の体は食事で摂取した糖質を分解してエネルギー源として使いますが、それがなくなると体内の脂肪を分解し、ケトン体を生成します。ですからケトン体は糖質を多く摂取しているとなかなか生成されません。糖質制限が体にいいというのは、糖質が下がることでケトン体の濃度があがり、それがミトコンドリアでエネルギー源となって代謝効率が良くなる。すなわちミトコンドリアが活性化するからなのです。 そのためエネルギー源として摂取するならば、ミトコンドリアの働きを鈍らせる糖質よりも、直接ミトコンドリアを活性化させるものを取ったほうがいい。果物には有機酸が多く含まれているので、砂糖を摂るよりは遥かにいいですね。
実は脳というのは「脂肪7割、たんぱく質3割」でできています。しかも「脂肪7割」の半分はコレステロール。コレステロールが不足すると脳の伝導も悪くなります。実際に総コレステロール値が150以下の人は、うつ病や認知症を発症しやすいという研究結果も出ていますよ。ですからコレステロールはむしろ積極的に食べるべきものと考えます。
自分の体内のミトコンドリアが活性化しているかどうか、わかる方法はありますか?
日々幸福感に満たされ、仕事が楽しければ、「ミトコンドリアと共に生きる」という状態なのです。なぜならそれは脳が最高の状態にあることを示しているからです。脳は最もエネルギーを消費する組織であり、体のなかでもっともミトコンドリアの機能の影響を強く受けるのは脳です。
生物が持つ24時間周期のリズムを「概日周期」(あるいは体内時計)といい、通常、体内では朝から夜へ向かう時間軸に沿って、朝はセロトニンが多く、夜はメラトニンが多く分泌されています。メラトニンは睡眠物質で、セロトニンは幸福物質。その分泌量のバランスが睡眠と覚醒のリズムを司っているのです。この概日周期に従って脳と体が働くことは脳のミトコンドリアの働きぶりによって決まるのです。
セロトニンがきちんと分泌されて脳の働きが正常であれば、午後の2〜3時くらいまでは幸福感に満たされていて仕事もはかどるのが普通の状態。ですから午前中に頭がよくまわらないという人は、セロトニン経路が充分に働いていない。すなわちミトコンドリアが活性化していないということになりますまた、セロトニンが減るとうつ病になりやすいので、落ち込みやすい人も要注意です。自分の気分で、ミトコンドリアの状態もわかるというわけです。
セロトニン経路は興奮系のシナプスなのでエネルギーを大量に消費します。そのためにはミトコンドリアに十分な栄養が必要です。脳は、車のハイブリッドエンジンに例えることができます。ハイブリッドエンジンの車の燃費がガソリン車に比べて高いのは、ガソリンと電気を両方使い分けているからです。脳もブドウ糖とケトン体のハイブリッドエンジンであるのが最も効率がいい状態です。このブドウ糖とケトン体のハイブリッドエンジンで駆動されるセロトニン経路は最高の働きをし、人間に強い幸福感を与えます。脳がうまく働いていないなと思ったときには、「甘いものを摂る」ことより「ミトコンドリアを活性化させる」有機酸を含む果物などを食べるほうがいいのです。
出典 東京工科大学 佐藤拓己教授 細胞の生死を決定するミトコンドリアの働きを活性化させ、長寿を実現するためのメカニズムより
ミトコンドリアは小器官で褐色脂肪細胞の中に多く含まれています。
活性化させる方法は寒冷刺激で、簡単にできる方法です。
背中の熱を逃がすと寒さを感じ脂肪を熱にミトコンドリアが燃やします。
出典 NHK
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