千衣子が好きだった赤いシクラメン納戸の奥に紺色のセーターが丸まって置いてあった。これぼくのだ、なんでこんなところに引っ張り出したときに分かった。ホコリと一緒に千衣子の毛が舞い上がった。こころの病を抱えていた千衣子は発作になると逝った目つきで部屋中を駆け回り、発作が収まると納戸の片隅にうずくまる。冬の日は寒かろうと僕が差し入れたんだ。千衣子が旅立ってからもう4年と4カ月が経ち、セーターの行方はすっか . . . 本文を読む
この子は千衣子(ちえこ)たくさんの表情とたくさんの声色を持つ千にひとつの子。もっとも千衣子らしい画像をセレクトしたらこれになった。激しき魂と強い眼差しを持つ千衣子。
3年前の今日の夕方、千衣子は私の腕の中で息を引き取った。荒い息遣いがおさまり緩慢な呼吸になってすぐに千衣子はゆっくりと眼を閉じた。
半開きの目と口を閉じ、こんにゃくみたいに力が抜けた千衣子をツレと代わる代わる抱きしめた。あれほど抱 . . . 本文を読む
(2015/08/23のTwitter転記)愛猫千衣子は本日16時30分に永眠しました。
今年の春ごろから心臓肥大心筋症を患い胸に水がたまる辛い闘病に耐えてきましたが最後は家族に看取られ15歳の生涯を終えました。
だっこ嫌いの千衣子を、ぼくは初めて胸に抱きしめた。
ビールを飲みながらツレと二人で通夜をしています。長い線香の煙を朝まで絶やさぬように...。千衣子の思い出を噛みしめながらぐいぐい . . . 本文を読む
2010/11/15千衣子満9歳、今日は千衣子がうちの子になった記念日
千衣子のヒゲは太くて長い眼の上のヒゲは4本耳の下に2本ここまでは左右対称に生えている鼻の下のヒゲは右が15本左が17本アゴにも短くて繊細なヒゲがもしゃもしゃとある千衣子はもう9歳だから人間に換算すると52歳動きが少し緩慢になった左下の犬歯が抜けたでもいいんだよ人間だって年を取れば衰えるんだから猫もヒトも同じ千 . . . 本文を読む
2010/10/20Cannon EOS Kiss X4
納戸から出てきた千衣子は澄ました顔してテーブルに横になった。これから食事だというのにガンとしてどかずそこに居座った。なにか不満がありげな、どこか物憂げな顔をしている。「千衣子どきなさい」ツレの声の真剣度を確かめる千衣子このあとしぶしぶテーブルを降りて千衣子'sベッドに移動した。「千衣ちゃん遊ぼうか・・・」と声をかけた「何か言った?」千 . . . 本文を読む
ふさぎこむ千衣子2010/09/12Cannon EOS Kiss X4
千衣子の憂鬱東芝テレビREGZA 42Z1がきた翌日のできごと。千衣子はトイレのあと、脱兎のごとく部屋を駆け回る。勢いをつけてソファーからテレビ(ブラウン管)に飛び移り、そのままサイドボードのてっぺんまで駆け上がる。千衣子はそこで、サカリがついた猫のように雄叫びを上げるのだ。これが日課の千衣子は9月7日の夜いつものよう . . . 本文を読む
風が強い風は屋根の上を逆巻いて走るぴゅうぴゅう走るベランダの窓が音をたてて揺れる風が吹くと気分はしぼむ千衣子も同じ彼女の嫌いなものが5つある風の音、オートバイが走る音、子供がはしゃく声、抱っこ、手足に触られること、野良猫だった母から引き継いだ負の記憶千衣子が受けたトラウマ風が吹くと千衣子は納戸のなかに引きこもる寂しがりやの甘ったれけれど、彼女は孤高の猫激しき魂と強い眼差しを持った猫。CHIEKO . . . 本文を読む
窓際のベッドに寝転がった千衣子はじっと外を見ていた「ちぃ何見てる?」その視線の先を追うと夜空にぽっかり浮かぶ満月がある猫のぶんざいで仰向けで月を見るなんてなんとあっぱれな千衣子。Cannon EOS Kiss X4七賢をぐびっとやる気分で牛乳をごくっと飲んだそのギャップにむせた月が笑う。Cannon EOS Kiss X4昨日の赤い落雷を見た人が会社にもいた。取引先や顧客からも落雷でFAXがダメと . . . 本文を読む
6時起床窓の外はどんよりした曇り空いかにも寒そうなベランダの窓を開ける音にハウスでうたた寝していた千衣子がすっ飛んできたへっぴり腰で窓から顔だけだして表をうかがい鼻をぴくぴくさせ深呼吸だけして戻ってくる
いつもそうなんだ野良猫OBのくせして寒い表に出たがらない
千衣子は夏の終わりに生まれ秋の終わりの寒い夜に拾われたみゃぁみゃぁと細くかぼそく鳴く千衣子の声が耳に残っている
激し . . . 本文を読む
千衣子を連れてこようと決意した夜、「ペット禁止」の声が出ているこのマンションで本当に子猫を飼えるのかどうかためらっていた。YES/NOを繰り返すたび、ダンボールハウスの小さな覗き窓からこちらを見つめる二つの眼と黒い鼻先がおもいだされ、いてもたってもいられなくて部屋じゅうほっつき歩いた。迷いながら窓を開けたり閉めたりするたびに冷たい夜風がほほをうつ、おもては寒い。車のキーを握ったとき、覚悟ができた。 . . . 本文を読む