知らないタイを歩いてみたい!

タイの地方を紹介する。関心のある方の集まり。写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

タイ・ユング旅行 ③ウボンラチャタニー森のお寺  -’86 夏ー

2020-12-01 04:50:09 | ウボンラチャタニー
 ガイドのアレンジに従って町はずれの河畔に立つ。相変わらずの黄褐色の行へ分からぬ川である。最初私はこの大河こそメコン川だと思った。ここはラオスとの国境の県であるからだ。メコン川はチェンライで出合ったことがある。感慨にふけっていると運転手が「この川はメーナム・モーゥン」(モン川)だと説明してくれた。私の早とちり勘違いだった。
 近代的な橋を東に渡るとそこはワーリンチャムラートという地区である。ちょっとした商業の町が開けている。町はすぐに水田地帯につながり水牛がムチ打たれて泥土を耕している。東北の死活を左右する雨の具合を聞いてみると「今年もまだ少ないね。」とのこと。カラカラの田圃も確かに目に留まる。途中右手に折れるとまさしく土のデコボコ道にかわる。
 南下すること数10分。熱帯林地帯に突入する。すると突如、タイでは珍しいコンクリート製の仏塔が聳えている。ウボン県では由緒あるお寺ワット・ノーン・パーポム(Wat Nong Pah Pong)というそうだ。およそ他のお寺とは趣を異にする。まずは境内が一面、熱帯林の中に埋まっている。昼なお暗き密林の空間は深く眠っている。「カッツ!カッツ!」と名も知らぬ鳥が天上で鳴いている。小道をやや進むと正面にウポーソ(本堂)が見えてくる。あの煌びやかな極彩色のものでなくギリシャ風のしっかりとしたコンクリート製の建物である。ボットの中は博物館になっており、さながら演劇ホールかのようで中央に対座する仏像も美術作品といった印象を受ける。木陰のやや向こうにウクィ(庫裏)が見える。黄衣の僧が水甕を抱えて木階段を上がっていく。あれ?顔をよく見ると西洋人である。タマユット派のこのお寺にはこの10年来アメリカ人、カナダ人、ドイツ人、オーストラリア人などの修行僧がかなり修行や瞑想をしているとのことである。西と東と両者融合不可能と嘆いた詩人キップリングの言葉に反し、ここウボンでは西洋と東洋が合いまみえていたのである。樹林環境の静寂で敬虔な聖域のあちこちで僧が瞑想しているそうである。
 現在、7月下旬はカオパンサー(入安居)期でこのお寺もひっそりとしている。本堂を少し右に折れたところにアルミサッシ張りのクティがある。ガイドに案内されて近づくとその中でこのお寺の80歳の高僧ルアン・ポー・チャーが瞑想中であった。一本の杖を左肩に支え特製の椅子に座し両眼を遠く樹林の彼方に合せて不動である。朝、一回の食事をとり終日ここに籠る。一瞬私はガラスケージの中に卵を抱いている鳥を覗いたかのような錯覚を覚えた。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿