カニヤ先生が現在教科会議で図って妙案を生み出さんとする取り組みに「アカデミック・エグジビション」なるものがある。生徒たちの英語学習への動機付けになりかつ現代的意義を持った企画をやりたいということであった。
昨年は「イングリッシュ・イズ・ファン」というスローガンで寸劇やらヒロシマの写真やらポスターを使って反核平和キャンペーンに取り組んだとのことである。なかなか社会的なテーマを扱って日本の英語教師にはあまりない発想だ。そして今年はサウンド・ラボの実演を企画中とのことであった。こうしたイベントは例えばタイ語科ではタイの民芸品制作、農業科では農産物展示といったふうに全教科が参加して行われ学校行事としてはかなりビッグなものである。このイベント1回の予算であるが各教科に1万バーツ、全体で10万バーツを要するということで毎年はやりにくく2年に1回実施するところなど学校によるらしい。「2日間の展示にこんなに予算をかけてやる値打ちがあるのかしら。」ともカニヤ先生は言う。うらやましい気もする。
やがてカニヤ先生も自分の授業が始まる。「キムラさん、教壇にたってみますか?」と彼女の提案でにわか教師になる。日本列島(地図)の紹介やら日本語のしくみ、日本の高校生の生活について英語でしゃべってみた。特に家庭でのテレビやパソコンゲームのはやり、おしゃれ感覚などの話は、目の前の生徒たちにどれだけ伝わったかは??である。
あと、再び校内を案内され、特に面白いなあと感じたのはタイダンス(古典音楽、踊り)の授業を見た時である。みんな赤い布を巻いて、素足で天空に納豆の糸を曳くがごとくに手と指先、腕を上げたり下げたりする振付を練習している。一人の女先生が細い声でメロデーを添えながら手拍子しながら教えている。生徒は縦列に並び少数の男子ははずかしそうである。あのバンコクのディナーショーでよく見かけるダンスの部分的な基礎練習である。話によれば古典音楽、踊りは週3時間履修し他に伝統楽器の練習もしているとこことである。自分の国の伝統的な文化を取り出して今の若者に伝えていく、そうして自分たちのアイデンティティーの継承発展のために大切にされた時間である、と心が強く惹かれたのである。
休み時間になって職員室に戻ったとき、何人かの生徒がやってきて日本の事などを聞きに来てくれた。こうした生徒の世代としては日本のテレビ番組への人気からくる話題も多く、特に「おしん」とか「トットちゃん」、「タナカユコ」などを媒介とした話題が花開いた。タイでは以前から日本のオーバープレゼンスが批判されてきたが、こうしたテレビ文化も海外侵略しているのか、という論調が聞こえないことはないが、なんでも物事には文脈があることも忘れてはならない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます