スピッツ結成からちょうど30年。
最初の2年はインディーズ時代で、1991年発売された1stアルバム「スピッツ」から28年間で16thアルバム「見っけ」が1週間前リリースされた。
この1週間、毎日ゆったりと何度も聴くことができた。なんて息の長いバンドなんだろう。自分もまさか30年近く聴き続けることになるなんて20代の後半には思いもよらなかった。
彼らはみな今年で52歳、4人とも長男という珍しいバンド。楽曲の作詞、作曲のほぼ全てをメインボーカルの草野正宗が創っている。50代でこのみずみずしい若い感性は一体どこから生まれてくるのだろうか。
相変わらず高音をさらりと軽やかに歌い切る声質も凄い。肩の力がますます抜けて自然体で力まない表現力にもつくづく感心する。
マサムネの歌詞がこの15年でどんどん洗練されて練られて変わって来ている。90年代のマサムネは、ストレートな感性とねじ曲がった感性とが同居して、性(生)と死(終)を捉えていた。
恋と愛に対しても始まりと終わりが顕著に見えて大胆な願望や空想が分かりやすかった。たぶんマサムネ自身が暗中模索で見つからなくて、見つけたかったのかなと思う。
このアルバムには、マサムネの謙虚な悟りと控えめな自信が静かに落ち着いて散らばっているように感じる。若いとき、あれほど変な詩やメロディを描いてもがいていたのに、なんてスマートになってしまったのだろう。
どうしたら売れるのか、ヒットするのか、血眼になっていた90年代前半が懐かしい。昔は昔、もう昔のスピッツを追っかけたりはしない。昔と比較したりはしない。
自分も十分に歳を重ねた。ゆったりとした感性でのんびりと今のスピッツを描いていく。眠くてまどろんだ意識の中でBGM的に心地よく聴ければいい。