(20150501) 民は之に由(よ)らしむべし、之を知(し)らしむべからず [論語]
論語のこの言葉を「民衆には何も知らせてはならない、信頼させて黙っ
てついてこさせるべきだ」との解釈がありますが、正しい解釈とはいえま
せん。
正しくは「民衆からは、その政治に対する信頼をかちうることはできる
が、政治の内容を知らせることはむずかしい」ということです。
「政治の内容を知らせることはむずかしい」ということは、現代でも
同じです。例えば、須坂市は厳しい財政状況が続いていますが、そのこと
は、全体としては理解していただけますが、個別には理解していただけな
いことが多々あります。その結果、市行政に多くの要望があります。
◯ある区から次のような要望書が提出されました。
「要望に対処することが困難な場合は、「予算の関係」「技術的に難し
い」「要望が過剰要求」「順番待ち」などの見解を示してください。次年
度以降の要望書作成の資料とし、区行政の円滑な運営に心がけます」
ただ単に要望するのではなく、市の説明を求めて、次年度以降の要望に
生かそうとしていただいていることに敬意と感謝を申し上げます。
◯ほかの区長からは「区の各組から要望を提出してまとめている
が、新たに就任した組長は『何かを要望しなければ』という思いで要望を
行うので、区としては要望しないわけにはいかない。市において要望の実
現が困難な事項は、困難と回答してほしい」とお願いされました。
◯選挙で選ばれる者は、要望に応えなければ選挙に不利になると考えがち
ですが、私は、きちんと説明すれば理解していただけると考えています。
為政者は個別最適ではなく、全体最適を考慮し、「断る勇気」も必要と考えて
います。
◯20160504 先日、ある会合で、市民の方から多くの要望をいただきました。帰りがけに出口で、ある市民の方が、「財政状況が厳しいのに、多くの要望があってお気の毒ですね。お体に気をつけて下さい」とおっしゃって下さいました。
◯20160504 2回目の選挙運動期間中に、ある一人暮らしのお年寄りの女性の方から、「厳しい時代だけど、誰かにやってもらわなければいけないから」といわれました。声高ではないその言葉から、声なき声を大切にしようと思いました。
◯同じことを言っても、捉え方が違う。理解してもらうことは、難しいと感じます。
※民(たみ)は之(これ)に由(よ)らしむ可(べし)、之(これ)を知(し)らしむ
不可(べからず) [論語]
原文は「民可使由之、不可使知之」(「可・不可」は「できる。できな
い」)の意味。
由しらしむべしの「由る」は「頼る」「従う」という意味。「べし」は
可能の意味。「べし」を「命令」または「当然」の意味に解釈した結果で
す。間違えた解釈となりました。
「論語の読み方(山本七平著。祥伝社発行)などから