先日、運動と医学の出版社「脳卒中運動学」の内容をもっと多くの方に理解していただくためにビデオ撮影をさせていただきました。2日間の撮影をさせていただき、1日目には園部先生にもおいでいただきました。
さて、脳卒中の評価に運動学の解釈が重要ではないという方が多くおられます。そのような方は、脳卒中のリハビリテーション評価でエビデンスのある評価を実施し、その問題となる項目に対してエビデンスのある介入(運動療法)を行うという方法かと思います。その方法を私は否定はしていません。しかし、例えば、脳卒中機能障害評価セット(SAIS)、フィーゲル・マイヤー運動機能評価、FIM(機能的自立度評価表)を用いることにより、心身機能・身体構造(機能障害)と活動(能力障害)の問題点は判定できます。その問題点に対する介入を行うことが良いということは充分に理解できます。
私は、その問題点を限定することを目的にしております。そのために、解剖学・運動学の知識を充分に活用して、機能障害レベルの問題点を限定することが目標です。
運動学の知識を用いていると言われている方で、麻痺側下肢支持性低下、座位バランスの低下などを問題点にしている方もいますが、申し訳ないですが、それは問題点ではありません。なぜ、麻痺側下肢の支持性が低下しているかを運動学で分析することが大切であると考えています。
その意味で、脳卒中に運動学な観点で分析することは非常に大切であるわけです。
先日もある施設の脳卒中患者の歩行動作を拝見しました。その方は、急性期に装具療法を用いて歩行練習を行なっているという方でした。麻痺側下肢の伸展パターンが強く、骨盤挙上、足関節底屈位という脳卒中患者に典型的な歩行でした。脳が傷害されて、このような歩行になるのではなく、骨盤挙上をするのも意味があるわけです。
介入方法はエビデンスのある方法を取り入れるのは重要です。我々も運動イメージを取り入れた運動療法を用いていますし、その研究を行なっています。しかし、もし筋短縮による関節可動域制限があれば、運動イメージしても随意性は改善しませんね。そのため、運動学的な評価と基本的な運動療法も重要であると言いたいのです。
書籍「脳卒中運動学」に書かれている内容は、それが全てというのではなく、皆さんに基本的に知ってほしいという内容です。書籍 第1章に書かせていただいていますが、他の評価・介入方法を否定しているのではありません。脳卒中患者さんを良くするには、様々な方法があって良いと思います。患者さんが良くなれば、どんな方法で良いと思います。
この脳卒中運動学に書かれている内容は皆に知っていただきたいと思っていますし、知っていただけることで更に患者さんを良くできると信じています。
撮影当日の集合写真です。皆さん、良い笑顔ですね。ありがとうございます。