新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

厚労省の新方針に想う(新型インフルエンザ)

2009-06-20 13:52:12 | 政策提言/政策への疑問

 第二波に向けた厚労省の新方針、「すべての医療機関で診療」の部分は各社報道されているところですが、全文はこちらです。 クリックしてひととおり目を通しましょう。

医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(改定版)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/2009/06/0619-01.html

さっそく、各地方自治体から「現場の声」が噴出していてYahooニュースで取り上げています。↓
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090620-00000011-jij-soci
インフル新指針に自治体戸惑い=対策緩和「本当にいいのか」-問答集作成へ・厚労省

噴出する声に応えてこれから問答集作成。 いきなり4桁の本番に突入してしまいドタバタ劇が世界中に報道されてしまったオーストラリアと異なり、問答集作成をやってる時間が得られる北半球はラッキーです。

さてさて、当管理人も、以前から非常勤先病院では「感染管理委員会メンバー」になり(委員会の方が管理人勤務日に移動してきた)、大学の対策以外に臨床現場でどっぷり浸っています。 臨床の方の立場からひとこと。

「外来部門においては、今後の患者数の増加に対応するために、現在、発熱外来を行っている医療機関のみならず、原則として全ての一般医療機関においても患者の診療を行う。その際、発熱患者とその他の患者について医療機関内の受診待ちの区域を分ける、診療時間を分けるなど発熱外来機能を持たせるよう最大の注意を払う。特に、基礎疾患を有する者等へ感染が及ばないよう十分な感染防止措置を講ずる。また、公共施設、屋外テント等の医療機関以外のところに外来を設置する必要性は、都道府県等が地域の特性に応じて検討する(上記厚労省HPからコピペ)」
管理人はよその役所出身ではありますが、霞ヶ関の思考回路は理解的な方ではあります。 これを書いた人の苦労もある程度理解はできます。 でも、こういう文章をサラサラっと書いて持ち回りでパッパッとハンコ集めてバン!とアップしてしまう・・・つうのは、(そうじゃないのはわかっておりますが)「現場知らずに机の上で云々~」って言われちゃうモトなんですね。

病院の待合室、平常時から、ソファもいっぱいに受診者がひしめいています。これを「発熱者」と「非発熱者」区域に分ける別室なんて無いんですね。で、感染拡大に冬季ふつうの「カゼ」も流行ってきた状況で、発熱者スペースは当然イスも足りなく物理的に立って待たなきゃいけなくなる。普段以上に。 で、発熱したボウっとした頭に浮かぶ怨嗟の対象が向かうのは・・・

病院の待合室、あらかじめ決められた診療時間が終わっても人は居なくならないんですね。普段でも。 精神科病院では心の重荷をある程度支えられるまでじっくり話す。時間が来たからといってやめられない。どの科でも事情は多少あれど同じ。
だから、「○時から○時まで発熱のある方の受付。 △時から△時まで発熱の無い方の受付」と言ったって、発熱のある方は○+3時間も4時間も終わっていなくて明らかに△時をすぎて重なってしまうんです。

こういう現場を体感する時間が霞ヶ関現役中に得られないのは悲しき構造的問題と思いますが、市井の病院感染管理委員会一員やってる霞ヶ関OBからエールとともに検討お願いする次第です。

 

 

 

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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厚生労働省新方針 (保健所職員)
2009-06-20 20:12:09
新方針の中身は、諮問委員会や大臣のアドバイザーの人たちも目を通してチェックしているはずだか、彼らも現場を知らず机の上で仕事をしているということでしょうか?
返信する
行政官です (Unknown)
2009-06-22 20:54:22
>こういう現場を体感する時間が霞ヶ関現役中に得られないのは
>悲しき構造的問題と思いますが、
>市井の病院感染管理委員会一員やって
>る霞ヶ関OBからエールとともに
>検討お願いする次第です。

直接インフルを担当しているわけではないですが、いわゆる霞ヶ関の役人です。

現場を知らないと漠然とおっしゃいますが、
インフル対策の担当においても交流人事で有名病院の臨床医もいますし、
若手の技官は少なくとも2年~10年の臨床経験があります。


自分自身も臨床を4年経験しました。
私は5つほどの病院での勤務経験がありますが、
いずれも、きちんと
 ・発熱患者とその他の患者について医療機関内の受診待ちの区域を分ける
 ・診療時間を分けるなど発熱外来機能を持たせるよう最大の注意を払う
 ・特に、基礎疾患を有する者等へ感染が及ばないよう十分な感染防止措置を講ずる
はすでになされておりました。
具体的には外来ブースを分けたり、
問診票や見た目の症状からトリアージナースが発熱患者を別室に案内したりです。

また、私の子供のかかりつけの近所の開業医でも、
きちんと時間を分けていたり、あらかじめ連絡することが求められています。

医療資源がギリギリなのは重々承知しておりますが、
(私はそれをどうにかしたいと思って役人をやっております)
インフル騒ぎが起きる前よりそもそも感染性の疾患(発熱性の疾患)を
外来や院内で流行らせないようにするのは医療者の責任ではないですか。

むしろ、今まで、咳をしたり人やインフルや麻疹などが疑われる人を
普通に扱っていた病院や医師こそが感染症に対しての意識が低すぎると感じています。


では、いわゆる市井の医師は、
発熱外来にも反対したのに、一般外来でみるのも反対なのですか?
結局どうしたいのでしょうか。そもそも関わりたくないのですか?

医療の現場がぎりぎりすぎて、声を上手にあげることができないのもわかりますが、
感染症対策は医療全体において基本的な問題ですし、
医師においてもコンシャスに関わるべき問題だと思います。

今回はいい機会なのですが、病院全体で感染症対策をきちんと整備したらいいのです。
その上で足りないリソースがあるのであれば、
堂々と医師が団結して政治なり、行政なり、マスコミにコミットして要求をしてください。
むしろ、そのほうが我々も動きやすくなりますし、現場にとっても良いのではないでしょうか。
よろしくお願いいたします。


返信する
ありがとうございます! (管理人)
2009-06-23 14:48:39
ありがとうございます!
行政現場からこういう声、実は出てくるの期待してました。
管理人も、行政組織の一員だった時には、言われっ放しで歯軋りなこともちょこちょこあり、しかし、上司はただただ「どう言われるか」で頭が一杯(まあ、00年頃大スキャンダルきっかけに仕方ない状況もあったのですが)、とても世間への反論どころじゃありませんでした。
 ”あの頃の私”に重ね合わせると、きちんと経験を示し冷静な反論できる態度は羨ましくもあります。
 医療機関により、特に、地方中小の物理的条件や精神科含めマイナー系など、もともと感染症を想定していない構造の機関もあること、それぞれ対応しなければならないこと知っていただければ、今後の判断にあたるデータのひとつとして認識いただければ幸いです。
 医療現場と行政、時にムッとすることやカンカンガクガクを経ながらも少しづつ良いものへ近づいてゆければ良いですね。
返信する

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