皮膚科の講義にて。4月から5月に皮膚科を受診した患者がいて、手の甲に特徴的な水泡を認めたとする。
「ご自宅でサクラソウを育てていますか?」
と聞いて、
「……先生、なんで分かるんですか」
と患者から返ってきたら、サクラソウによる接触性皮膚炎で一発診断という話を聞いてたまげた。職人技過ぎてちょっと憧れます。植物分からな過ぎて、サクラソウってなんだか知らなかったけど(笑)。医大生・たきいです。
ところで、医学用語は略語の嵐である。簡単なところでは、AMIは急性心筋梗塞で、DMは糖尿病。このあたりは医学生ならだれでも知っているのだが、適当な文字の羅列にしか見えない類のものにはもううんざり。
この夏はとある病院へ見学に行ったのだが、そこにいた研修医の先輩が、
「○○○? ハハッ、知らねーや」
と言って、iPadで検索している姿はショッキングだった。略語が分からな過ぎてカルテが読めないのだという。国試を突破してから日の浅い先輩でもそうなのだから、自分の将来が不安でしかない。先輩は、あー、あれのことかとそのあと呟いていたが、その日本語名すら初耳の自分がそこにいた。
ところで、そのような2文字ないしは3文字のアルファベット配列は全部でいくつあるのか。計算してみれば、
27×26×26=18252(通り)
と、なる。多すぎでしょ。塾の教え子から「場合の数なんてどうしてやるんですか役に立たないじゃないですか」と聞かれて困ったことがあったが、今さらひとつの答えを見つけた。絶望するためにやるのである。あ、そういえば4文字のやつも意外に多いよなとか思い始めてしまったが、これ以上掛け算するのは精神衛生上やめておこう。
この2、3文字のアルファベットの中には“AKB”とか“NMB”とか恐らく医学用語にはなさそうな奴も含まれているから、せめて総数は半分くらいには減ってほしいところ。しかしそれでもとても覚えきれる量ではない模様。普通はそういう覚え方しないとしても、だ。
ところが、アルファベットばかりに文句も言っていられず、時には漢字にも悩まされる。「るいてんぽうそう」を漢字で書けと万が一試験で出されたらたぶん意外に書けないし(笑)、医学部にいると何気なく読めるようになっている「悪心(おしん)」とかも一般的には難読の部類に入るのではなかろうか。
嗚呼、医の道は実に険しい。
(「エッセンスを詰め込むことによって、可能な限りコンパクトな構成としました」と書いてある教科書が普通に厚くて泣ける人(笑))