医大生・たきいです。

医大生的独言。

「城崎裁判」を読んで

2015-03-06 22:41:56 | 読書感想文

春休みらしく飲んでばかりの毎日ですが、今日の夜は年末に食べ損ねたままでこれまで冷凍庫に放置プレイだったカニと一緒に麦とポップ。〆の雑炊が完璧でございました。夕方から飲み始めたので真夜中のちょっとした時間が心地よい今日この頃でございます。医大生・たきいです。



チャラモトチルドレンの女の子たちとお喋りしていた。「シロサキ温泉ね!」との筆者の言葉に対して、チャラモトくんは

「キノサキ温泉です。」

とすぐさま訂正を入れた。それだけ西日本において城崎温泉は絶大な知名度を誇っており、変な読み方をされるのは許せないという彼の憤りが感じられた。たぶん、仙台駅前で「“城崎温泉”はなんて読むでしょうかクイズ」をやったら正答率は、よくて3割くらいじゃないかと思うけど。許してほしい。君たちが「秋保温泉」をなんて読むか知らぬように、我々東北人は「城崎温泉」を知らなかったのである。

城崎温泉。


「我が県のみなッハアーーーー! 我が県ノミナラズ! 西宮みんなの、日本中の問題じゃないですか!! ぞう゛い゛う問題ッヒョオッホーーー!!」

で有名な元議員が城崎温泉に行きまくってたとか全然行ってなかったとかで少し前に有名になったところだ。恐らくこの騒動で東の人は「難しい読み方だっちゃ」と城崎温泉の存在をはじめて知ったはずである。

城崎温泉をなかなか正しく読めずに、読み方を自分の中で矯正すらできなかったのは不思議だったが、城崎の温泉街を歩いて気がついた。



これは…!!
すぐさま頭の中の知識を引っ張り出した。

万城目学を新刊を出した。西のとある温泉地での限定発売で、関東では入手困難。その新刊の舞台はシロサキ温泉というーー
この誤った知識のせいだったというわけだ。思い込みは怖い。作家万城目学のファンなもので、前から欲しいと思っていた。そうかここだったのか。思いがけず訪れた城崎温泉での出会い。縁を感じられずにはいられなかった。限定発売の新刊の売り上げは好調だとネットで見た。そのヒット記念でタオルでも売られているのかと思った。あからさまに万城目学の印字の入ったタオルに過ぎないように思えた。

「“本体”はどこに売っているのですか」

とお土産売り場のお姉さんに問うと

「それが本です」

とのお答え。「です」の上ずる感じが如何にも関西訛りだった。タオルのカバーで、防水仕様の紙でできているとのこと。ずいぶん恥ずかしい質問をしてしまった。この赤面は「鴻の湯」でのぼせたせいだと自分のなかで誤魔化した。

「城崎裁判」は、小説なのか、エッセイなのか。「鴨川ホルモー」や「偉大なる、しゅららぼん」。万城目学は日本の歴史をネタに盛り込んだ小説の評価が高いが、エッセイも悪くないのである。エッセイ調で始まる「城崎裁判」は、エッセイかと思いきや、万城目ワールド全開の短編小説。帰りの特急きのさき号で一気に読み上げた。

医者よりも小説家になりたいというギャグをこのところよくかましている。小説家は須らく城崎温泉にてイモリに話しかけられるのだとか。イモリが見えなかった。話しかけてくれなかった。帰ったら志賀直哉を読もう。時が来たら、また城崎温泉を訪ねたい。そう誓って、京都駅で電車を乗り換えた。







(温泉評論家としての将来もありかなと思ってきた人(笑))