受話器の向こうの彼女の声は
幾分控えめなトーンで絞り出すように…
実は…
アタシ…
今度…
結婚…
することになったんだけど…
(えっ?マジかよ!まだ22歳だぜ!)
(それよりそんなことを言うため?)
(わざわざ電話をかけてきたのか?)
(別れてもう何年も経つ元カレに…)
そうなんだ…
あまりにも突然に聞かされた
元カノが結婚するという現実に
とてつもなく大きなショックを受け
僕の思考回路は凍ったみたいに停止した
後悔してるのに…
いまでも好きなのに…
僕の口からは
そうなんだ…という
弱々しい頷きの言葉しか出てこず…
来月の末に式を挙げる日程…
(なんだよ!もう1ヶ月前じゃないか!)
(間際に元カレへ報告してる場合かよ!)
(いや…だからこそ連絡してきたのか?)
日程…なんだけど…
このまま結婚していいのかって…
本当にいいのかって…
この前からずっと考えていて…
(考えていて?)
(あと1ヶ月後に式を控えてるのに?)
(もう結納とかも当然済んでるだろ?)
(式の案内状なんかも出してんだろ?)
結婚する前に
○○ちゃんに
逢いたいの…
どうしても逢いたいの…
逢う…?
って…
オレと逢ってどうする?
結婚式もとっくに決まって…
相手の人が好きじゃないのか?
好きなのは好きだけど…
(ん?)
いざ結婚となると…
(ん???)
正直に…
正直に言うけど…
やっと気づいたの…
アタシが本当に結婚したいのは…
○○ちゃんだって…
(ええ〜ッ!)
(何を言ってるんだ?)
(どういうこと?)
(どういうことなんだ?)
だから…
結婚は○○ちゃんとしたいの…
(僕と結婚したい?)
(1ヶ月後に迫った)
(誰か他の結婚をキャンセルして?)
結婚予定の報告に続いて
予期せぬ彼女の本当の想い?
僕と結婚したいという…
彼女の声はそう言ってるようだが
受話器を当ててる僕の耳は
正常に機能してるのか?
ただでさえ停止していた僕の思考回路は
そのままグルグルと激しく渦巻きはじめ
上下左右も天地も前後もなくなるほど…
そのあとどう返事をして
どんな内容の話をして
彼女との電話を切ったのか
全く覚えていない
電話を切ったことはもとより
それ以降
自分がどう行動したのかも…
(to be continued…)
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