気がついたら…
というか
自分でもそれなりに分かってたはず
そんなつもりで行動していたんだろうけど…
いつのまにか
東京から地元の実家に帰って
家の玄関のポーチにもたれながら
僕は長い間しゃがみ込んでいた
しゃがみ込みながら
家の中に入る勇気が
なかなか湧いて来なくて…
夏休みでもないし
冬休みでもない…
なんで
こんな中途半端な時期に
実家に帰ってきたのか…
ポーチにもたれながら
ボンヤリと秋の空を眺め続け
ずっと動かずに佇んでいたことが
いまでも心に深く残っている
なんで
僕は家に帰ってきてしまったんだろう?
そう思いつつ…
あんなに長く感じた時の流れは
未だかつてなかったかもしれない…
そんなこんなで
どうやって彼女に逢うことになったのか?
どんな連絡のやり取りがあったのか?
今となっては僕の記憶は定かではないけど…
ただ…
街中のとある喫茶店で逢う約束
僕が彼女に電話でもしたのだろうか?
そうかもしれない
それとも彼女からかかってきたのだろうか?
そんな約束をして…
予定の時刻より数分前だったと思う
約束した喫茶店のドアを開けて入ると
彼女は奥の方の席で
俯いたまま座ってて…
いらっしゃいませという
ウェイトレスの声と同時に
顔を上げた彼女は
すでに涙ぐんでいたような表情だったけど…
僕の顔を見るなり
一気にその顔が大きく崩れた
むせび泣くような声と同時に…
(おいおい…こんなところで泣くなよ…)
(お客さんたちが変に思うじゃないか…)
そう思いながら
不思議と僕は明るく苦笑い?しながら
彼女の向かいの席にゆっくりと座った…
できるだけ冷静に振る舞おうと
泣きじゃくる彼女をなだめるように
ウェイトレスの怪訝な顔を気にしつつ
ホットコーヒーを頼んでいた
目の前で久しぶりに見る彼女の顔
泣き顔だったけど数年前と変わらない
そんな顔に懐かしさを覚えながら…
結婚式まであと1ヶ月なんだろ?
たとえ僕と結婚したいと思ったって
もうどうしようも出来ないじゃないか…
自分で決めたんだろ?
結婚するって…
だけど…
アタシが本当に結婚したいのが誰かって
よ〜く考えてみたら
○○ちゃんの顔しか浮かばなかったから…
でも…
目前に迫った結婚式の日取りとか
相手のこととかいろんなことを覆してでも
そこまでしてもオレと結婚したいのか?
うん…
結婚したい…
○○ちゃんと結婚したい…
挨拶もろくにしないまま
すぐに本題に入るように
話し始めることに…
いまさら結婚したいって言っても
オレはまだ学生なんだぜ?
本当に結婚できると思ってるの?
そんなことなんて関係ない…
アタシは○○ちゃんと結婚したいだけ
いますぐじゃなくてもいい
結婚したいという想いだけ…
結婚って言われて…
僕には全く予想もできなかった
相手が彼女だろうと誰だろうと…
結婚生活って…
オレだって
まだ○○のことが好きだけど
結婚となるとそれは別だろ?
好きだという想いと別だろ?
じゃあ!
なんで帰ってきたの!
わざわざアタシと逢いにきたの!
アタシのことをどう思ってるの!
(えっ?)
(そうなのか?)
(僕が地元に帰ってきたってことは…)
(僕の本心って…)
泣きながら訴えるように叫ぶ彼女の言葉に
自覚できなかった自分の本心
見透かされた思いがして…
そうか…
僕も彼女と同じ想いでいたんだ
彼女と結婚したいという…
だけど…
いくら彼女と同じ想いだったとしても
本当に彼女と結婚できるのか?
彼女の結婚式って
もう1ヶ月後に迫ってるんだぜ?
ましてや僕は単なる学生なんだぜ?
卒業すらも出来そうにない…
東京のアパートに
彼女の電話がかかってきてから
まだ1週間も経っていないのに
飲まず食わずだった僕の身体は
ガリガリに痩せ…
じゃあなんで帰ってきたの?
そういう彼女の言葉に
ガツンと打ちのめされたのか?
そんな
核心をついたような彼女の言葉の前で
僕の心は跪坐くように崩れ始めていた
どうすればいいのか?
本当にどうすればいいのか?
どうすればいいんだ?
揺れ動く心に
なんにも思い浮かばないまま…
(to be continued…)
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