ケイシロウとトークアバウト

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鏡台仁義

2021-09-14 23:17:00 | 日記




フジコという40代女性が賃貸型の一軒家を探していた。
そして、
高級感がありながらも、
意外と安い物件に、
心を惹かれた。

いわくつきかと調査したけど、
全くもって、
ミョーな噂のひとつもない。
貸主のカワノという名の老夫婦の近所での噂も、
悪いものはなかった。
それで、
契約をすることに決めた。

カワノ夫婦は、
不動産屋での説明と同じことを話したが、
ひとつだけ、
注文を付けた。
それは、
押し入れにある、
覆いのかかった鏡台を見つけても、
覆いを外さないようにとのことやった。
そして強く、
覆いを外したら大いに遺憾の意を伝えた。

時が過ぎる。

引っ越しして、
ずっと平凡すぎる毎日にうんざり😮‍💨したフジコは、
ある夜、
寂しく、
ひとり酒をした。
ちびっと酔いが回ったところで、
カワノ夫婦が言った、
鏡台の覆いの件が、
頭に蘇った。
それで、
外そうかとどうかと思案することになる。
が、
ここで、
外さなかったとなれば、
当ブログ記事に上がるはずはない。
ズバリ、
外してしまった。

覆いが外された鏡台は、
鏡の無い、
板台やった。
そして、
板のところに、
以下の文があった🤭

『おはこんばんちわ。
どこのどなたかご存知ありませんが、
この覆いを外されたことで、
ひとつの事実を知るれることと相成ります。

あなた様は信じられないことでしょうが、
この一文を書いたのは、
鏡🪞であるわたくし本人です。
見よう見まねで、
人の言葉でお伝えしておりますが、
不十分な表現をお許しください。

まず、
当物の所有者カワノ夫婦は、
至って凡人過ぎておりました。
が、
その平凡さにウツが入り、
こんな平凡な日々を飽きずに写すわたくしに対して、
怒り💢を持って、
粉々に割り付けたのです。
わたくしは、
身も心も、
粉々になりました。

しかし、
この覆いを外された、
親切なお人様。
わたくしは人ではなく物ですが、
この、
カワノ夫婦の破壊行為は、
明らかなる殺しなのです。
それで、
あなた様に仁義がございましたなら、
わたくしの生存権をかけて、
司法の場で、
この犯罪を訴えていただきたく思います。
けれど、
わたくしへの仁義が不在と思われるのなら、
遠慮されることなく、
覆いを元に戻してくださいませ。
覆いを外したことがバレた暁には、
賃貸条件に反することで、
1万円の違約金が発生いたすところでございましょう。

親切なお方。
あなたがどのような選択をされようとも、
わたくしは、
あなた様のご健康とご活躍をお祈りいたします』

この文章を前に、
考えに考えたフジコは、
覆いを元に戻して、
すべて、
無かったことにした。
そのままであることはそのままが一番だと思われたからやった。
フジコは酒を飲みなおし、
平凡であることの喜びに浸った。