ひびこれこうじつ

とりとめなく、日々の覚書です。

時間旅行

2022-05-26 16:24:00 | 日々のこと
離婚前後、1番大変だったときにお世話になった整体の先生がいて、その頃、月に一度の勉強会のような会に、三、四年、いやもっと通っていた。電車に1時間半くらいの、ちょっとした小旅行だった。
毎回ぽんぽんを一緒に連れて行ったのだけど、先生はちっちゃかったぽんぽんをとても可愛がってくれた。当時色々な事情でほとんどお出かけができなかったぽんぽんにとっては、割と楽しみだったらしい。

そこに素敵なリサイクルショップがあったのを思い出して、新居の家具を探しているぽんぽんと、十何年ぶりにその街に行った。
お昼前について、先生とよく行ったイタリアンでパスタランチをたべた。
「わあ、ここ覚えてる!変わってないね」
前菜のサラダについてくる、マヨネーズが添えられた一口サイズタコの味と、置かれた位置まで変わってなくて、びっくりした。
私が頼んだ本日のパスタは明太子とヤリイカのクリームソース。
ぽんぽんは、トマトとモッツァレラ。
どっちも相変わらず美味しい。
「この街、相変わらずレベル高いなあ」
優雅な暮らし、というのを教えてくれたのも、整体の先生だった。

会計の時に、
「懐かしかったです」
というと、
「この街はあんまり変わらないんですよ」
と、レジのお姉さんが言った。

隣を歩くぽんぽんはこんなに大きくなったのに、風景が同じで、なんだか不思議な感じだった。

あのころはほんっとうに先が見えなくて、不安しかなかった。体と心の関係に興味があって整体師になろうかと思ったけれど、そういう才能はないと思い知り、八方塞がりになったのもこのころだった。

そんな話をしたら、
「そんな大変だったのかあ」
と、ぽんぽんが驚いたようにいうから、
「けっこう綱わたりだったんだぜい」
ということで、その頃の私に、もうしみじみとお疲れさん、と言ってあげる小旅行になった。

ちなみにお目当てのリサイクルショップは、ホームページだけのこしてなくなっていた。

その後、ちょっと足をのばしてぽんぽんのお気に入りの雑貨屋さんに案内してもらう。
その間、おばあちゃんからはひっきりなしに電話がかかってくる。
「今どこにいるの」
「猫がずっと鳴いてるの、どうしていいかわからない」
「何時に帰ってくるの」
おばあちゃんの甘えたは今に始まったことじゃないけど、ストッパーが効かなくなってきた。
歳をとると、社会性というオブラートが外れて、エゴのパターンが剥き出しになるんだなあ。

ああ、自分の未来がやばい(赦)。


その整体の先生とは、何年か前にご縁が切れてしまったと思っていた。『奇跡講座』が正しいと思い込んでいた私は、先生の話を受け入れられなくなってしまっていた。
先日、先生から譲り受けていた先生の手作りのドールハウスを処分していいものか、どうしても先生に聞かないといけないと思い、連絡した。
長い間、音沙汰なしで、さぞかし不義理なやつだと怒られるかと思っていたら、
「あらあ、ひさしぶり!元気?」
と、上機嫌な声が返ってきて、
「え、先生、怒ってないの?この間電話返さなかったのに」
と、思わず言ったら、
「そうだった?わすれちゃったわ!」
と言われ、そのまましばらく話し込んだ。
先生の忘れちゃったがほんとうかどうかわからないけど、お言葉に甘えることにして、
「今度、会いましょうね」
と、約束して電話を切った。

なんだかな、こういうやりとり、今年二人目だな(笑)



遅れてくる実感

2022-05-05 12:01:00 | 日々のこと

ゴールデンウィークに、ぽんぽんが帰ってきた。

玄関を入ってすぐに、おむつをはいて徘徊する(甲状腺の病気で過活動気味なので、ゲージから出すとずっと歩いている)くぅちゃんと遭遇。


「あ、猫がおる」


くぅちゃんはあんまり見えていないらしく、

「人型……

くらいの認識で、チラ見して通り過ぎていく。


ぽんぽんは猫好きだけど、

「きゃー、猫だ!」

というキャラでもないので、ごく静かな対面からの、ごく静かな間合いで過ごすこと3日。


「くぅちゃんは、どうも猫トイレの縁がまたげないらしいんだわ」

と私がいうと、

「んじゃ、スロープを設置してやるか」

と、ぽんぽんがダンボールを解体して工作を始めた。


私は、明日帰るぽんぽんにクッキーを持たせてやろうと思って、台所でピーナッツバタークッキーと、くるみのクッキーを焼いた。

台所から床に胡座で座り込んで、チョキチョキと鋏を動かす二十歳の娘を見つつ、そういや、前の猫にも、ぽんぽんはしょっちゅう猫ハウスを作ってたなあと懐かしい気持ちになった。

午前中にはおばあちゃんと三人でお大師様にお参りに行って、ボタンを見てきたし、なんとも長閑なゴールデンウィークで、本当にありがたいことだとしみじみしていたら、くぅちゃんがよろよろとやってきて、ぽんぽんが解体しているダンボールの上に、のしっと乗った。

「おい、どけや」

と、ぽんぽんにおいはらわれる。

しかしめげる気配はなく、こんどはハサミに顔を近づける。

「あぶないってばよ!」

と、ぽんぽんと工作グッズをめぐる攻防がはじまり、ついにぽんぽんがうれしそうに、

「母さん、こいつ、猫だよ!」


……そうだってばよ。

やっと実感が湧いたかい。


ジャスミン

2022-05-04 20:58:00 | 日々のこと
くうちゃんは、うんちをオムツですると決めている。猫トイレではしたくないらしい。

「おかしい……くうちゃんのうんち、さっきちゃんと片付けたのに、なんかうんちの臭いがする。どこかに落ちているのでは?」
「え?そう?」
「なんか、ずっとうんちの匂いがしてる気がする。あーもう、うんちノイローゼになりそう」
「そうかなあ、気にならないけど」
「いやいやいや、ぜったい臭うって!」
と、私が部屋の床を這い回っていると、ぽんぽんが、
「あー、母さん、それ、ジャスミンでは?」
「え?」

そうだった、私の部屋の窓を開けていた。
そして、窓の外は今、ジャスミンが咲いている。とんだ日陰なので普通のジャスミンのようにわっさわさには咲かないが、密かに咲いている。そして、ジャスミンの香りに含まれる、インドールとかカストールとかいう成分は、うんちのにおいにも含まれているらしい。
今日の昼間、ちょうどそういう話をしてたところだった。

「え、じゃ、私しばらくずっとこの匂いに悩まされるのでは?」
「あー、そうねえ」

せっかく咲いたのに、なんかこう、微妙な気分。