ひびこれこうじつ

とりとめなく、日々の覚書です。

坂本繁二郎と青木繁

2022-10-12 12:14:32 | art

風邪を引いた。急に寒くなったから、体が追いついていないらしい。

肩から上が別人のようだ。

これ以上ひどくなりませんように。下火になったとはいえ、コロナはまだ姦しいし。

 

先日の坂本繁二郎の展覧会は、正確には、同郷の青木繁との二人展(というのだろうか、こういうのは)だった。

 

展覧会の最後の絵は、それぞれの絶筆だった。

坂本は晩年の月の絵の締めくくりとして、月の姿は見えず、暖色の雲の中に月光のみが浮かぶ、まろみのある絵。

それに対して青木は、荒れたタッチの朝日の絵だった。

長く生きて、描くことそのもののようになっていった坂本は、自分の人生を十分に生き、仙人のようになった。

それに対して溢れんばかりの才能を持て余して早世した青木は、さぞ悔しかっただろう。

 

一瞬そう思って、違うな、と思った。

 

坂本と青木がいると思い、長い人生と短い人生があると思い、仙人のようになった人を羨ましいと思い、早世した人を無念だろうと思うのは、私が、私がいると思い、時間があると信じ、長生きしたい、平安でありたい、いや、平安であるべきだ、という信念の投影だ。

 

坂本も青木も、柔らかな月影の絵も荒々しい朝日の絵も、それを見る私も、すべては一つであり、今ここにある。

 

多分私は、それがぜんぜんわかっていない。

でも、わかってなくていいんだとも思う。


坂本繁二郎

2022-10-06 15:47:12 | art

夏に、

「日本史上、最も知的な雑談」

という裏表紙の一文に興味を持って、小林秀雄と岡潔の対談本、『人間の建設』を買った。

夏の新潮フェアか何かで、涼しげなアクリルの栞を選んでいいと本屋さんがいうので、青いのをもらって挟んでおいたら、夏休みに少し帰ってきたぽんぽんがそれを見つけて、

「あ、お母さんも青にしたんだ、青、すごく人気」

という。

そうだった、この子、本屋でバイトしてたんだ。

その本の中で話が絵画論になり、坂本繁二郎という人の絵をお二人が誉めているので、見てみたいなといったら、ぽんぽんが、

「坂本繁二郎なら、今、アーティゾンでやってるよ」

というではないか。

 

そうはいっても、母と老猫の介護+コロナ第七波で出かけることが憚られ、あきらめていたのだが、ようやくコロナも下火になり、母が7時間のデイサービスに行ってくれる日に合わせて、滑り込みで見に行ってきた。

半世紀以上東京にいるが、アーティゾンは多分初めて(わすれてなければ)。

坂本繁二郎は馬の絵で有名らしいが、静物がとても良かった。

晩年の月の絵は、静かな静かな、でも暖かな色彩のある絵で、仙人が描いたみたいな絵だった。

 

常設を見ても少し時間があったので、遅いお昼ご飯に海鮮丼を食べて(マグロ、はまち、タコ、きゅうり、たくあんが角切りになってて、真ん中に黄身が乗ってた。不思議な新食感)、

「あれ、丸善ってここだった?」

と脳内迷子になりながら、高島屋前の丸善に。

 

焼き物フェアが開催されてて、良さげな小皿を見つけて2枚買う。

その後、

「読んでない本が何冊あると思う?」

という脳内ツッコミを自覚しつつ、たまのお出かけだからさ、と言い訳しつつ、三冊ほど本を買って帰宅。

 

いやいや、心の栄養でした。

 

アーティゾンの横は只今建設中。どんなビルが建つのかな。見渡す限りビル。人間って怖いわー。