センチュリー・プラントに纏わる話は、恩賜庭園はひとつしかない、との思い込みから始まりました。
話を進める前に、センチュリー・プラントについて書きます。
アオノ・リュウゼツラン(青の龍舌蘭)は、センチュリー・プラント( Century Plant )の英名があるほど開花が遅く、温帯では滅多に花が咲かないので100年も掛かる、との意味でこの英名がある。熱帯では10年もすると開花し、木質の茎と硬くて厚い多肉質の葉という栄養器官を有することを特徴とするリュウゼツラン科に属している(朝日百科 世界の植物 他)。
そのアオノ・リュウゼツランが10年振りに開花した、との新聞記事を読み、何度か訪れている芝離宮恩賜庭園へ向かいます。
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8月15日、靖国神社への参拝を済ませ、JR浜松町駅から芝離宮恩賜庭園へ向かい、アオノ・リュウゼツランの所在を受付の女性に尋ねます。
「それは、浜離宮恩賜庭園にあります。ここから徒歩でおおよそ15分くらいです」
猛暑の昼下がり、アスファルトで舗装された歩道を汗だくになっての15分は、42kmのフルマラソンを完走するくらい長く、10年振りに開花したアオノ・リュウゼツランの新聞記事を読み写真を撮ろうと決めた経緯を炙り出し、その軽率な判断を額から流れてくる塩味の濃い汗で洗濯する15分でもあったのです。
そもそも、アオノ・リュウゼツランが開花した庭園名を確認すべく8月14日の朝刊を探しても何処にも見当たらないのに、浜松町の芝離宮恩賜庭園と判断したことが、ことの始めだと、文句を言う相手もいない。汐留川沿いに中の御門入口まで炎天下の歩道を黙々と歩くしかないのでした。
「浜松町にある事務所へ20年以上も通勤していたのに、恩賜庭園がふたつあったことを知らなかった。それが、炎天下の歩道を歩く羽目に陥れただけ。そうでしょう、元気印さん」
耳が痛いボケ封じ観音さまの囁きです。
さて、浜離宮恩賜庭園は、浜松町から行くと「中の御門口」から庭園へ入りますが、新橋駅からだと「大手門口」になります。新橋駅から大手門口へ向かう方が、新橋駅周辺の変貌を見聞する楽しみがあります。
今回は逆ルートでしたが、日テレタワーや汐留シティーセンターなどに立ち寄り流行の一端に触れる機会に恵まれました。時間に余裕を持たせて散歩気分でこのエリアを通るだけで、その時々に開催されるイベントに出会うなど、思わぬ余禄がありそうです。
人、ヒト、ひとで賑わうエリアを抜け地上に出てからも、周辺の風景を楽しめます。
年代に浸ることを誘う南門橋。築地川に架かるこの橋の先が浜離宮恩賜庭園です。
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南門橋の左側には、近代ビルと屋形船とが違和感もなく混在する築地川の風景が佇んでいます。
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南門橋を渡り切ると大手門口が視界に飛び込んできます。
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庭園案内平面図、アオノ・リュウゼツラン、早蒔きのキバナコスモスを紹介した案内板を一読して入園券売り場へ・・・。65歳以上のシニアは、半額の150円で入園できますが、ここは年齢を証明するものがないと300円です。ロンドン、ニュヨークなどでは、受付でその旨説明すると、元気印の顔を一瞥しただけでOK。日本は、風貌だけで年齢を判断しないところが多いので要注意です。こういう時だけ性悪説になるようですから・・・。
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お目当てが「お花畑」にあることを受付で確かめ、一目散に直行します。
アオノ・リュウゼツランの説明板から、前回は平成13年に開花したことが分かります。
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とげのある多肉質の長い葉が放射状についた株の中心から伸びている花茎(手前が右側のもの)。
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花茎の左側から撮った写真。
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花茎から出ている蕾の塊(写真右のラン)。
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蕾が成熟し黄色の長い雄しべが上向きに飛び出しています(写真左のラン)。
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一通り撮影を終えて帰宅する際に、今年以前の開花情報をお尋ねしましたが、記録がないので不明。また、誰が何時頃移植したのか等の基本情報はないようです。米軍人が占領時代に植えた、日本人が持ち込んだなど諸説があって、それらの根拠は検証されていない模様でした。
余談になります。
平成13年は西暦2001年、21世紀が始まった年。そして、アメリカ同時多発テロ事件が9月11日に勃発しました。年表を眺めていて興味を引いたのは、1月1日にギリシャがユーローを導入したこと。ユーロー圏の金融危機解決に向かって全世界が知恵を絞っている今日の姿を誰が予測したでしょうか。
芽生えてから開花するまでに、長いものでは100年かかると言われ「センチュリー・プラント」の英語名を付けられた、アメリカ大陸に分布しているリュウゼツラン。
「1世紀の植物」が開花する時は、人知の及ぶところではない、何かよからぬ事態が人の世に起こる前兆なのかと、予察したくなります。
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見事に咲いているアオノ・リュウゼツラン。
開花後、株は枯死して消滅する1回結実性の植物なので、別の場所から新しい芽を出して人の目を楽しませてくれる。それが何時になるかは予測できないと、多肉質の葉を切断していた管理人が教えてくれたのです。浜離宮恩賜庭園のアオノ・リュウゼツランとの再会は、早くて10年後の平成34(2022)年7~8月でしょうか。
その時、「センチュリー・プラント」が予告する天地異変が起こらないよう祈念ですね。
奇しくも、昨年3月11日、日本は東日本大震災に見舞われました。10年前の1月26日、マグニチュード7.7規模の大地震がインド西部のグジャラート州に発生、死者2万人、負傷者数16万6千人とインド政府は発表。11月17日頃には、極大を迎えたしし座流星群が出現しています。
他方今年は、金星が主役を演じた「金環日食」「金星日面経過」、そして「金星食」がありました。
この庭園のアオノ・リュウゼツランが咲いた10年前の状況と重ね合わせると、天地異変の先触れではなかったか?
なにはともあれ、気にかかる符号ですね。
「そのような素人判断は、下手な考え、休むに似たり。熱帯夜が続き寝不足していますね」
ボケ封じ観音さまの世界に地震などの異変現象はないはず・・・!?。敢えてここは、馬の耳に東風を吹かせます。
ブログを最後まで読んでくれたくれた方への話題提供です。
浜離宮恩賜公園以外にリュウゼツランを植栽している所がないかと調べた結果を紹介します。
A.東京都立夢の島熱帯植物園
昭和63(1988)年に開園したが、平成18(2006)年4月から日比谷アメニス夢の島グループで管理するように変更となった。
平成19、20、22年7月にアオノ・リュウゼツランが咲いた記録は残っている。それ以前の記録がないので、来歴なども含めた詳細は分からない。
B.藤沢市江ノ島 サムエル・コッキング苑
1. 横浜在住のアイルランド人貿易商サムエル・コッキングが、明治15(1882)年に開園した、日本で3番目に古い植物園。
2. 別荘の向いに江ノ島神社の所有地があり、江ノ島頂上部の土地3,200坪余を購入し、和洋折衷の大庭園の造築を開始し、3年後に完成した熱帯植物園。
3.大正12(1923)年9月1日に起きた関東大震災等で温室の上屋は全て倒壊したが、煉瓦を主体にした基礎部分や地下に造られた施設は、温室遺構として現存している。煉瓦造りの温室遺構としては、現存する唯一のものとされ、明治中期に造られた文化遺産として貴重なものと言われている。
4. 3~40年前に植えたアオノ・リュウゼツランが開花したのは、平成17、20、23、24年7月。それ以前の開花情況などは、記録がないので分からない。
5.サムエル・コッキングがアオノ・リュウゼツランを植栽したのか、彼の遺族が植栽したのかなど、その来歴は分からない。
C.国立科学博物館 筑波実験植物園
1.日本国立科学博物館の1研究部門として、日本の先駆的な植物の研究を行う研究機関のひとつ。昭和53(1983)年10月開園。
2.中日本(日本の中央部)の維管束植物、東アジアのシダ、ソテツ、サトイモ類、南アメリカのラン科植物を重点的に収集している。
5. 世界に300種ほどあるリユウゼツランのうち15種を植栽しているが、昭和61(1986)年から栽培しているサケリュウゼツが平成20(2008)年6月、22年後に初めて開花。この時、アオノ・リュウゼツラン、リュウゼツラン属の1種も初めて開花したが、その後、いずれも開花は見られない。
ここに掲載した3箇所の関係者には不躾な電話取材にも関わらず、丁寧なご協力を賜わり御礼申し上げます。有難うございました。
話を進める前に、センチュリー・プラントについて書きます。
アオノ・リュウゼツラン(青の龍舌蘭)は、センチュリー・プラント( Century Plant )の英名があるほど開花が遅く、温帯では滅多に花が咲かないので100年も掛かる、との意味でこの英名がある。熱帯では10年もすると開花し、木質の茎と硬くて厚い多肉質の葉という栄養器官を有することを特徴とするリュウゼツラン科に属している(朝日百科 世界の植物 他)。
そのアオノ・リュウゼツランが10年振りに開花した、との新聞記事を読み、何度か訪れている芝離宮恩賜庭園へ向かいます。
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8月15日、靖国神社への参拝を済ませ、JR浜松町駅から芝離宮恩賜庭園へ向かい、アオノ・リュウゼツランの所在を受付の女性に尋ねます。
「それは、浜離宮恩賜庭園にあります。ここから徒歩でおおよそ15分くらいです」
猛暑の昼下がり、アスファルトで舗装された歩道を汗だくになっての15分は、42kmのフルマラソンを完走するくらい長く、10年振りに開花したアオノ・リュウゼツランの新聞記事を読み写真を撮ろうと決めた経緯を炙り出し、その軽率な判断を額から流れてくる塩味の濃い汗で洗濯する15分でもあったのです。
そもそも、アオノ・リュウゼツランが開花した庭園名を確認すべく8月14日の朝刊を探しても何処にも見当たらないのに、浜松町の芝離宮恩賜庭園と判断したことが、ことの始めだと、文句を言う相手もいない。汐留川沿いに中の御門入口まで炎天下の歩道を黙々と歩くしかないのでした。
「浜松町にある事務所へ20年以上も通勤していたのに、恩賜庭園がふたつあったことを知らなかった。それが、炎天下の歩道を歩く羽目に陥れただけ。そうでしょう、元気印さん」
耳が痛いボケ封じ観音さまの囁きです。
さて、浜離宮恩賜庭園は、浜松町から行くと「中の御門口」から庭園へ入りますが、新橋駅からだと「大手門口」になります。新橋駅から大手門口へ向かう方が、新橋駅周辺の変貌を見聞する楽しみがあります。
今回は逆ルートでしたが、日テレタワーや汐留シティーセンターなどに立ち寄り流行の一端に触れる機会に恵まれました。時間に余裕を持たせて散歩気分でこのエリアを通るだけで、その時々に開催されるイベントに出会うなど、思わぬ余禄がありそうです。
人、ヒト、ひとで賑わうエリアを抜け地上に出てからも、周辺の風景を楽しめます。
年代に浸ることを誘う南門橋。築地川に架かるこの橋の先が浜離宮恩賜庭園です。
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南門橋の左側には、近代ビルと屋形船とが違和感もなく混在する築地川の風景が佇んでいます。
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南門橋を渡り切ると大手門口が視界に飛び込んできます。
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庭園案内平面図、アオノ・リュウゼツラン、早蒔きのキバナコスモスを紹介した案内板を一読して入園券売り場へ・・・。65歳以上のシニアは、半額の150円で入園できますが、ここは年齢を証明するものがないと300円です。ロンドン、ニュヨークなどでは、受付でその旨説明すると、元気印の顔を一瞥しただけでOK。日本は、風貌だけで年齢を判断しないところが多いので要注意です。こういう時だけ性悪説になるようですから・・・。
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お目当てが「お花畑」にあることを受付で確かめ、一目散に直行します。
アオノ・リュウゼツランの説明板から、前回は平成13年に開花したことが分かります。
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とげのある多肉質の長い葉が放射状についた株の中心から伸びている花茎(手前が右側のもの)。
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花茎の左側から撮った写真。
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花茎から出ている蕾の塊(写真右のラン)。
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蕾が成熟し黄色の長い雄しべが上向きに飛び出しています(写真左のラン)。
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一通り撮影を終えて帰宅する際に、今年以前の開花情報をお尋ねしましたが、記録がないので不明。また、誰が何時頃移植したのか等の基本情報はないようです。米軍人が占領時代に植えた、日本人が持ち込んだなど諸説があって、それらの根拠は検証されていない模様でした。
余談になります。
平成13年は西暦2001年、21世紀が始まった年。そして、アメリカ同時多発テロ事件が9月11日に勃発しました。年表を眺めていて興味を引いたのは、1月1日にギリシャがユーローを導入したこと。ユーロー圏の金融危機解決に向かって全世界が知恵を絞っている今日の姿を誰が予測したでしょうか。
芽生えてから開花するまでに、長いものでは100年かかると言われ「センチュリー・プラント」の英語名を付けられた、アメリカ大陸に分布しているリュウゼツラン。
「1世紀の植物」が開花する時は、人知の及ぶところではない、何かよからぬ事態が人の世に起こる前兆なのかと、予察したくなります。
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見事に咲いているアオノ・リュウゼツラン。
開花後、株は枯死して消滅する1回結実性の植物なので、別の場所から新しい芽を出して人の目を楽しませてくれる。それが何時になるかは予測できないと、多肉質の葉を切断していた管理人が教えてくれたのです。浜離宮恩賜庭園のアオノ・リュウゼツランとの再会は、早くて10年後の平成34(2022)年7~8月でしょうか。
その時、「センチュリー・プラント」が予告する天地異変が起こらないよう祈念ですね。
奇しくも、昨年3月11日、日本は東日本大震災に見舞われました。10年前の1月26日、マグニチュード7.7規模の大地震がインド西部のグジャラート州に発生、死者2万人、負傷者数16万6千人とインド政府は発表。11月17日頃には、極大を迎えたしし座流星群が出現しています。
他方今年は、金星が主役を演じた「金環日食」「金星日面経過」、そして「金星食」がありました。
この庭園のアオノ・リュウゼツランが咲いた10年前の状況と重ね合わせると、天地異変の先触れではなかったか?
なにはともあれ、気にかかる符号ですね。
「そのような素人判断は、下手な考え、休むに似たり。熱帯夜が続き寝不足していますね」
ボケ封じ観音さまの世界に地震などの異変現象はないはず・・・!?。敢えてここは、馬の耳に東風を吹かせます。
ブログを最後まで読んでくれたくれた方への話題提供です。
浜離宮恩賜公園以外にリュウゼツランを植栽している所がないかと調べた結果を紹介します。
A.東京都立夢の島熱帯植物園
昭和63(1988)年に開園したが、平成18(2006)年4月から日比谷アメニス夢の島グループで管理するように変更となった。
平成19、20、22年7月にアオノ・リュウゼツランが咲いた記録は残っている。それ以前の記録がないので、来歴なども含めた詳細は分からない。
B.藤沢市江ノ島 サムエル・コッキング苑
1. 横浜在住のアイルランド人貿易商サムエル・コッキングが、明治15(1882)年に開園した、日本で3番目に古い植物園。
2. 別荘の向いに江ノ島神社の所有地があり、江ノ島頂上部の土地3,200坪余を購入し、和洋折衷の大庭園の造築を開始し、3年後に完成した熱帯植物園。
3.大正12(1923)年9月1日に起きた関東大震災等で温室の上屋は全て倒壊したが、煉瓦を主体にした基礎部分や地下に造られた施設は、温室遺構として現存している。煉瓦造りの温室遺構としては、現存する唯一のものとされ、明治中期に造られた文化遺産として貴重なものと言われている。
4. 3~40年前に植えたアオノ・リュウゼツランが開花したのは、平成17、20、23、24年7月。それ以前の開花情況などは、記録がないので分からない。
5.サムエル・コッキングがアオノ・リュウゼツランを植栽したのか、彼の遺族が植栽したのかなど、その来歴は分からない。
C.国立科学博物館 筑波実験植物園
1.日本国立科学博物館の1研究部門として、日本の先駆的な植物の研究を行う研究機関のひとつ。昭和53(1983)年10月開園。
2.中日本(日本の中央部)の維管束植物、東アジアのシダ、ソテツ、サトイモ類、南アメリカのラン科植物を重点的に収集している。
5. 世界に300種ほどあるリユウゼツランのうち15種を植栽しているが、昭和61(1986)年から栽培しているサケリュウゼツが平成20(2008)年6月、22年後に初めて開花。この時、アオノ・リュウゼツラン、リュウゼツラン属の1種も初めて開花したが、その後、いずれも開花は見られない。
ここに掲載した3箇所の関係者には不躾な電話取材にも関わらず、丁寧なご協力を賜わり御礼申し上げます。有難うございました。