戦争準備阻止 全国で
市民が連帯
戦争準備を止めるため全国で連帯を―。自公政権の下で、九州・沖縄を中心とした「軍事要塞(ようさい)化」が進む中、全国の市民が連帯して「全国ネットワーク」をつくって対抗する動きが生まれています。(斎藤和紀)
「新たな戦争体制づくりが全国に広がっている。沖縄・西日本で軍事拠点化が進む地域の人たちがつながることで、戦争を止めたい」―。そう決意を語るのは、発起人である「ノーモア沖縄戦 えひめの会」運営委員の高井弘之さんです。
きっかけは2023年11月に那覇市で開かれた沖縄県民平和大集会です。このとき連帯集会も開き、全国から100人以上が参加し、大分や京都の弾薬庫新設計画など各地の現状を共有。「有事になれば標的になるのは沖縄だけではない。全国の問題だ」「各地の運動がバラバラでは止められない」という共通認識が生まれ、ネットワークづくりが動きだしました。
2月に西日本
24年4月にネットワークづくりに向けた集会を愛媛県で初めて開催。各地の団体とのつながりが増えていき、8月に沖縄、9月に広島、11月に大分で集会を重ねました。今年2月22日に鹿児島市で集会を開き、「戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク」を正式に設立する予定です。
高井さんは、各地の基地機能は相互につながっていると指摘。「国は全体を見据えて戦争準備を進めるが、私たちは全体像を把握するのが難しい。だから互いに情報共有し、共同のたたかいが必要だ」と意義を強調します。
共通の問題点
ともにネットワークづくりに取り組む「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」の新垣邦雄事務局長は、各地で共通する問題があると指摘します。「一つは、住民の不安や疑問に十分説明せず情報開示しないことだ。住宅地の近くに軍事施設を造ろうとしており、国際法人道法の『軍民分離』に反し、有事に住民が巻き込まれる恐れがあるのも共通している。これらは大きな要求になる」と訴えます。
米中対立の最前線となる南西諸島でも連帯する動きが広がっています。24年6月には、鹿児島の馬毛島・奄美大島、沖縄のうるま・宮古島・石垣島・与那国島などの市民団体の代表者が国会内に集まり、「島々から呼びかける全国を戦場にさせない!東京行動」を開催。各地の状況を報告し、全国で連帯し、戦争準備を止めようと島々から呼びかけました。
平和へ学んで連携
自公政権は、中国を仮想敵とする米国の戦略に基づき、沖縄など西日本を中心に軍事強化を進めてきました。沖縄には与那国島(2016年3月)、宮古島(19年3月)、石垣島(23年3月)に陸上自衛隊の駐屯地を開設し、ミサイル部隊を配備してきました。
「安保3文書」
安保3文書を改定した22年末以降はさらに急速に進みます。▽沖縄本島の勝連分屯地にミサイル部隊を配備▽大分、青森、京都、広島、鹿児島などで弾薬庫を新設▽大分・湯布院にミサイル部隊を統括する「第2特科団」を発足▽広島・呉に「多機能な複合防衛拠点」を整備▽自衛隊が平時から利用できる「特定利用空港・港湾」に10道県28カ所を指定―などです。
※これらの施設は真っ先に攻撃対象となります。
周囲に約4万人が住む大分分屯地に弾薬庫を新設する計画が公表されたのは23年2月でした。住民の間に危機感が走り、同8月に「大分敷戸ミサイル弾薬庫問題を考える市民の会」を結成。弾薬庫について情報がなかった住民らは、弾薬庫問題に取り組む市民団体と学習を重ねました。会の池田年宏・運営委員は「学ぶ中で、事故が起きた時に住民に被害が出ないようにする『保安距離』が足りない可能性があることや、大分だけで解決できる問題ではないことが分かった」と語ります。
同10月の日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン」では弾薬が大分分屯地から沖縄に輸送されていました。池田さんは、このことを住民説明会の資料で知り、沖縄の市民団体に伝えると翌日に現地で行動が立ち上がりました。池田さんは「政府は全国で基地化に動いている。市民側の連携は重要だ」と訴えます。
学習会や署名
昨年3月には、海自呉基地(広島県呉市)に近い日本製鉄の跡地に、南西諸島への輸送部隊や軍需工場などの武器・弾薬の兵たん拠点をつくる計画が持ち上がりました。翌4月、市民が「日鉄呉跡地問題を考える会」を結成。学習会の開催のほか、月2~3回、呉駅前や日鉄跡地で署名活動に取り組み、オンラインも含め2万人近くを集め、市や防衛省に要請しました。
会の森芳郎共同代表は、人口減が続く呉市では「雇用創出」になると容認する住民も少なくないとしつつ、「子どもたちのために、『平和な呉』を残したい。住民への訴えを強める」と意気込みます。
京都の祝園分屯地では23年に8棟の弾薬庫新設が発表され、24年末には6棟を追加する計画が明らかになりました。「京都・祝園ミサイル弾薬庫問題を考える住民ネットワーク」の大西浩安運営委員長は「南西諸島の軍事要塞(ようさい)化は大変だが、遠くの出来事だと捉えていた。すぐ近くで軍事基地化されるとは」と驚いたと言います。奈良や大阪など近隣の市民ともつながり、署名集めなどを続けています。ネットワークへの参加で「互いに遠くに離れているが、手をつないで声を上げたい」と語ります。